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事例

総工費 150 億ポンドの複雑な建設プロジェクトにおける効率性向上の取り組み

クロスレール社

 

本記事は Esri UK & Ireland の事例記事「Crossrail」を翻訳したものです。

 

クロスレール(Crossrail)は、ロンドン中心部の混雑緩和を目的としてイングランド南東部で建設中の鉄道路線で、その総延長は 118km にもなる。この路線の建設プロジェクトでは、Esri 社の ArcGIS プラットフォームを使用し、何百もの同時作業プログラムおよび何百万もの新しい線路や駅、設備などの資産を管理している。建設に携わるクロスレール社は、コスト効率の管理や現場の安全性の確保、安全に情報を共有できるウェブ、モバイル、3D GIS アプリを作成した。

課題

150 億ポンド(約 2 兆 923 億円)が投じられるこのクロスレールプロジェクトは、ロンドンおよびイングランド南東部に新しい鉄道を建設するものだ。ヨーロッパ最大のインフラプロジェクトとなり、42km のトンネルと 10 の新駅が建設される。鉄道が完成すると、西のレディングとヒースローからロンドン中心部を経て東のシェンフィールドとアビーウッドまで、40 の駅が利用可能なルートとなる。

このような規模のプロジェクトでは、刻々と変化する資産と多数の同時作業プログラムの状況を記録・管理するために地理情報システム(GIS)が必要となる。クロスレール社の既存の GIS は、最新のブラウザや OS との互換性を確保するために更新する必要があった。また、新たに提案されたソリューションでも、より高い時間効率化と最先端の機能が求められた

解決策

徹底的な比較検討ののち、クロスレール社は Esri UK との間にエンタープライズ ライセンス契約(EA)を締結した。その後、Esri UK のプロフェッショナル サービス チームのサポートを受け、Esri の ArcGIS プラットフォームを使用して、サーバーベース、デスクトップ、ウェブ、モバイル、3D の各アプリケーションからなる統合プラットフォームを 14 ヶ月で開発した。同社では現在、以下のものを使用している。

クロスレール社は GIS 製品とは別に Esri UK のデータサービスを利用することも決めた。このサービスは、英国陸地測量部の背景地図やその他のコンテキストデータを同社の企業 GIS に直接取り込むものだ。このサービスを利用することで、背景地図の品質が急速に向上し、時間のかかるデータ管理の必要性が減り、年間数百時間の労力を削減することができた。

メリット

ArcGIS プラットフォームにより、クロスレール社は付加価値の高い GIS サービスを開発・導入する柔軟性を持てるようになった。その新しいソリューションの第一弾は、すでに以下のようなメリットをビジネスにもたらしている。

従業員の生産性向上

クロスレール社の資産保護エンジニアは、調停に発展する可能性のあるクレームに対応するために、ArcGIS ベースのアプリを使用して地盤移動レポートを作成することができるようになった。彼らはアプリを使用して必要な情報をすべて選択、照合、提示することができるため、レポート作成に費やす時間を最大 80% 短縮することができる。

効果的な不動産管理

建設現場の責任は、プロジェクトのフェーズが変わるごとに、ある請負業者から別の請負業者へと引き渡される。ArcGIS のタイム スライダー ツールを使用することで、組織内の従業員は、どの請負業者がどの区画の土地に責任を負っているかを簡単に確認することができる。このソリューションにより、責任の所在が明らかになり、多数の建設現場での放置された資材などによる無断占拠のリスクが軽減され、不必要な遅延やコストの超過を回避することができるようになった。

よりコスト効率の良いオペレーション

クロスレール社による別の取り組みとして、ArcGIS を使用して施設を 3D でモデリングし、新駅の運営者に有益な 3D 資産記録を作成している。ArcGIS の 3D 機能により、資産と施設空間の関係性の理解が深まり、よりコスト効率の良い維持管理が可能になった。また、インフラ管理者は、これまで以上に理解を深めた上で、現場の課題を特定し、分析することができるようになった。

安全性・安心感の向上

クロスレール社の従業員が工事現場を調査する際には、モバイルタブレットで ArcGIS Collector アプリを使用し、正確な境界線を土地の記録と照合し、調査した結果や現場との相違点を入力する。これにより、安全を確保するための囲いを正しく設置し、工事現場から一般の人々を隔離することができるようになる。駅の 3D マッピングも、将来的には駅の運営者を支援する上で重要な役割を果たすことになるだろう。

外部との明確なコミュニケーション

ArcGIS プラットフォームを使用することで、クロスレール社は路線、設備、トンネル、そして駅に関するデータを第三者や一般市民、メディアと簡単に共有することができる。将来的には、ロンドン交通局などのパートナー組織がクロスレール社のデータをウェブサービスとして利用したり、同社の GIS ポータルに安全にアクセスできるようにしたりすることを計画している。これによりパートナー組織との協力体制が強化されるだけでなく、クロスレール社が第三者のためにコンテンツを管理する時間の短縮や、古い情報を基に意思決定が行われるリスクの軽減という効果も期待されている。

 

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掲載日

  • 2021年9月17日