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サイトライセンス導入による全庁型GIS。業務活用に向けた取組み

柏崎市 総合企画部 企画政策課 情報政策係

 

全庁のあらゆる業務で活用できるサイトライセンス(SG-ELA)を導入。
業務に根差したGIS活用を部門横断型のワークショップにより促進する。

業務目的、業務課題の明確化 → 必要な情報の洗い出し → 実現方法の検討
というプロセスで思考するGIS

市の紹介

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新潟県柏崎市は、三階節で名高い米山をはじめ、黒姫山、八石山、西山連峰の山々の懐に抱かれた、42kmの海岸線を持つ風光明媚な9万人の地方都市である。

古くから、北国街道の宿場町、北前船の寄港地などとして栄え、その交通の利便性から縮みの行商が盛んに行われ、豊かな経済と独自の文化を誇る。

 

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明治時代に周辺地帯から石油が噴出したことにより、製油会社の設立が相次ぎ、それに関連して機械金属工業も発展した。現在では原子力発電所も稼動するなど、エネルギーとものづくりの町として繁栄をしている。

平成19年7月に発生した中越沖地震では、京都大学防災研究所と協働でGISを基盤としたり災証明発給業務を進めた。震災対応以降もArcGISサイトライセンス(SG-ELA)導入、月例での部門横断型のGIS活用推進ワークショップ開催などGIS業務活用の取り組みが続けられている。

 

GISの歴史

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柏崎市のGIS導入の取り組みは早く、平成9年のGIS研究会発足後、ガス、道路等の設備管理を主としたGIS導入が検討され、大縮尺の基図整備、統合型GISなどが整備された。
平成19年の中越沖地震以降は、庁内のより多くの業務でGIS活用を促進するために方策が検討された。
平成21年には、庁内のあらゆるPCでGISソフトウェアが利用できるサイトライセンス、ベースマップとして利用する民間の住宅地図、業務に共通利用するアプリケーションが導入された。
同時にGIS活用推進ワークショップを開催し、業務目的や業務課題を明確化するワークショップ実施、先進自治体の活用事例やGISソフトウェアの操作研修など毎月1回テーマを設定して進めている。

業務成功事例から

平成21年に情報政策係でGIS担当であった本間主査によると、「中越沖地震で新潟県庁において運営されたEMC(Emergency Mapping Center)をモデルとして、市役所での業務にもっとG I Sが活用できると感じた」という。また、「何故、柏崎市が震災前までに整備してきたGISが震災後に発生した様々な地図を必要とする業務にうまく利用できなかったのか?逆になぜ震災後に急遽立ち上げられた県庁のEMCでは効果的に活用できたのか?」など様々な疑問が頭の中に湧いたという。

 

GIS活用推進ワークショップ

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EMCの事例が示すように、業務での意思決定や計画立案に果たす「主題図」の役割は非常に大きい。技術的にはそれらを支援するGISソフトウェアや空間データは必要ではある。ただし、それ以上に重要なことは職員による業務課題や意思決定に必要な情報の整理と判断した。そこで「業務に根差したGIS」を促進するために、平成21年4月から部門を横断する形でGIS活用推進ワークショップを月次で開催することになった。

 

ワークショップ

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GIS活用推進ワークショップでは、業務、参加者において多様なメンバーが参加する場として意見交換が行われた。GISに関する疑問、期待、地図が使えそうな業務といった基本的な所から整理を開始した。ワークショップの手法を利用して、複数のグループに分かれて意見の体系化や構造化の作業を行った。また全体での発表により別グループとの共通課題の発見や相対的な状況認識などが行われた。

 

IMC(Imaginary Mapping Chart)の活用

事務局で、実務者が直面する課題を空間的に解決する具体的方策を導き出す仕組みを考えるうちに、下のIMCというチャートが産み出された。

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これは業務目的を「目的」欄、次に必要となる情報を「レイヤ1」~「レイヤ5」欄に、さらにレイヤの組合せ方を「組み合わせ方」に記入して、最終的な主題図のイメージを明確化するためのチャートである。このようにして各課の業務を共通のフォーマットで把握することで企画政策課情報政策係で解決すべき課題や必要となる情報の把握が容易になるとともに、作成する主題図の仕様が明確にできた。

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汎用GISの業務利用

GIS活用推進ワークショップでは、IMCで整理した主題図を作成するために、ArcGISの基本的操作も実施された身に付けたスキルにより、職員自らの手で主題図を作成する。このとき顕在化する課題もあり、職員自身でそれを認識する機会ともなっている。例えば、庁内での住所表記の不統一により、アドレスマッチング精度への影響やGISデータ項目名の部署間のばらつきなど様々なレベルの技術的な課題に出会う。

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インフルエンザマップ

平成21年秋以降、全国的に広がったインフルエンザ感染。柏崎市でも感染者数をWebページで数値を公開していたが課題があった。数量や感染状況全体や空間的な傾向が把握しづらかったことだ。IMCで整理された課題、レイヤ、仕様に基づいて発症状況を日時で可視化した。主題図は市のホームページで公開され当初の課題は解決された。平成21年11月10日から平成22年3月24日まで継続的に更新された。

 

システム構成

サイトライセンス導入により、中央のデータベースから個別のPCのクライアントまで共通のGISで運用されている。主題図作成はArcInfoを利用し、データベースはArcSDEを利用する。

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GISを支えるスタッフ

情報政策係の3名がGISの運営を支える。GIS活用推進ワークショップの事務局業務を始め、ワークショップや月例の委員会でのフィードバックを元に必要な対応を柔軟に行いながら全庁的なGIS運営を進めている。

プロフィール




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関連製品

資料

掲載日

  • 2011年1月1日