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事例

過疎化・高齢化の著しい集落の人口動態及び生活実態調査の分析

鹿屋体育大学スポーツ経営学研究室

 

過疎化・高齢化の著しい地方自治体住民の生活実態に着目(その1)

近年、中山間地や離島を中心に過疎化・高齢化が急速に進行している。
そこでGISを利用し過疎地の集落の実態を把握し、現状の問題点や課題を明らかにした。

背景

近年、都市に人口が集中し、中山間地や離島では過疎化・高齢化が急速に進行している。過疎化や高齢化が進んでいる地域では、水資源管理や相互扶助、農耕地・山林・道路の維持管理など集落機能の維持や自治会・伝統文化活動などが低下し、集落機能の維持が困難な集落が急増している。
過疎化が進んだ地域では、過疎・高齢化を前提とした集落維持の仕組みづくりや集落の再編を含む幅広い政策の検討が求められている。

こういった問題は鹿児島県でも例外ではない。鹿児島県では平成20年に県内全市町村に対し集落の状況に関するアンケート調査を行った。しかしこれは同県を7ブロックの広域単位でまとめたものであって集落といった狭域レベルの実態を把握していない。

そこで今回、鹿児島県で高齢化率が最も高く、人口減少が著しい南大隅町を対象地域として、人口統計データと住民への生活状況アンケート調査をもとに、GISを利用して集落の実態を把握し、現状の問題点や課題を明らかにすることを目的として調査を行った。

調査/データ取得

調査を行うに当たり、以下の項目を「集落の定義」として位置づけ分類を行った。

<用語>

<地域区分>

研究方法

鹿児島県で高齢化・人口減少が著しい自治体を対象地域とし、人口統計データと住民への生活実態の聞き取り調査(アンケート)を行い、何が課題として挙げられているかについて聞き取り調査を行った。

アンケート内容は、生活(14項目)、産業(6項目)、自然環境・防災(5項目)、地域文化(4項目)、景観(4項目)、定住促進(4項目)、日常生活の利便性(6項目)、自治会運営(9項目)の計52項目からなり、自治会役員に対し、聞き取り調査を行った。職員が対象となる集落全てに出向いて面接による聞き取りを行った。その結果、全集落から有効回答が得られた。

分析方法

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2008年の人口統計データより、集落単位の人口、高齢化率、高齢者夫婦世帯割合等を求め、さらに、クラスター分析で集落のクラス分けを行った。

高齢化率と人口統計データおよび役所・支所から中心施設までの道路距離と高齢化率の関係を集落単位で分析し、人口統計データの10変数について主成分分析を行った。その結果4つの主成分が得られた。
クラスⅠ:
平均年齢は低く、人口が多い
クラスⅡ:
平均年齢は低く、人口が少ない
クラスⅢ:
平均年齢が高く、人口が少ない
クラスⅣ:
平均年齢が高く、人口が少ない、また老人世帯が多い

クラスター分析によるクラス分けを行ったところ、各集落がどのクラスに当たるか、視覚的に情報を得ることができる。平均年齢は低く、人口が多い地域では、役場や支所周辺の比較的人口が密集している地域もしくは海岸沿いにある。平均年齢が低く、人口が少ない地域は内陸部、平均年齢は高く人口が少ないクラスは町全体に広がっていることがうかがえる。GISで分布図を作成することによって、どの地域の集落が過疎化されているかひと目でわかるようになり、そこからさらに生活面での利便性(鉄道や道路などの交通や商業施設などの利便性等)の分析を行っていけば、さらに詳細なその集落が抱えている問題が出てくる。

 

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鹿児島地域でのGISの取り組み

山﨑教授は、鹿児島地域の高齢化・過疎化に注目するほか、NPO法人かごしまGIS・GPS技術研究所(以下KINGGT)の理事として、産官学で連携したGIS・GPSの普及に努めている。KINGGTは、平成17年に設立され、教育・行政・民間企業等の幅広い分野に対し、GIS・GPSへの理解を深め、それらの知識・技術を普及・向上させ、住民に安心して豊かな生活を営むことが出来るようにすることを目的として設立された。KINGGTはGISを教えられる人を増やそうとする「GIS活用人材育成プログラム」の活動に力を注いでいる。GISを教える人間が増えればもっとGISに興味を持ってくれる人、広がりが増えるのではないかと期待している。また、多くのGISシンポジウムや講習会が首都圏地域で開催され、鹿児島地域で開催されるのは少ないので、KINGGTが中心となって地元に根ざした普及活動を行っている。

21年度後半から、国土交通省の支援を受けて、KINGGTは鹿児島県内自治体のGIS普及促進のため、自治体等との「連携・ネットワークの強化」に取り組んでいる。

同教授は、現在、GIS学会九州支部長を務め、2007年と2008年に鹿児島大学においてKINGGTと連携してGIS DAY in九州を開催している。

おわりに

「過疎化・高齢化の著しい地域の実態を、GISで表現し集落の現状や問題点が視覚的に把握できた。人口が少ない地域ほど限界集落の割合が大きく、少子高齢化・人口減に加え、生活の不便などを抱える地域が多い。
今後は、過去のデータと比較して、将来を予測するほか、災害時の要支援者(特に独居老人)への対応や、住所の地図化(高齢者、独居老人、廃屋、小中学生)を行い、災害情報や危険箇所の地図化を行い、GISでより地域に密着した安心・安全な街づくりの提案も行って行きたい。」と、山﨑教授は語る。

プロフィール


山﨑 利夫 教授



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掲載日

  • 2011年1月1日