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事例

ArcGIS Online を活用した交通事故情報の公開

熊本県警察本部

 

県内の安全対策活動として交通事故情報を公開
利用者の要望に応え小学校区での表示に対応

概要

熊本県警察本部庁舎
熊本県警察本部庁舎

熊本県は九州の中心部に位置し、古くから交通の要衝である。雄大な自然が生み出した阿蘇山や歴史を感じる熊本城や天草をはじめとした観光スポットが多く、県内外の観光者やツーリングを楽しむ旅行者が多く訪れている。近年では 2016 年(平成 28 年)の熊本地震や、2020 年に発生した令和 2 年 7 月豪雨で道路に大きな被害があった。
熊本県警察本部交通企画課(以下、熊本県警)では、交通安全対策の一環として、各地域の警察署を通じて、県民向けに交通事故の多発地点に関する情報発信を行ってきたが、各方面から地図を使った交通事故に関する情報提供を望む声が多く届いていた。
そこで、県内の交通事故情報を県民向けに公開する「交通事故発生状況マップ」を ArcGIS Online で構築し、2020 年 4 月より公開を開始した。

課題

熊本県警では、交通事故に関する情報の一元管理を行う「交通事故情報管理システム」で、発生した交通事故情報の蓄積や、交通事故の傾向を分析し、県警のホームページや広報媒体に、事故発生件数や傾向に関する情報を発信してきた。
さらには、各署が行う地域での交通安全対策の検討材料として、その地域での事故の傾向や多発地点の情報を本部から各署へ提供し、各署がさらに細かな学区などの小地域に合わせた交通事故状況の地図を作成し、地域に配布していた。
このように情報発信を行ってきたが、事故の発生件数や傾向だけでは発生状況が伝わりにくく、また各署で行っている小地区毎の地図作成が職員の負担になっていた。また、熊本県警が隔年で県民を対象に実施している意識調査では、情報提供に関する要望が高まっており、また県内各自治体の職員や PTA・地域の交通指導員からも、地域内での交通事故情報が分かりやすい形式で提供されることを望む声が多く届いた。

ArcGIS 採用の理由

各方面から分かりやすい交通事故情報の提供を望む声が多いことから、2018 年(平成 30 年)より交通企画課では提供方法についての検討を開始した。その時期に情報収集の目的で参加した GIS コミュニティフォーラムの中で紹介された、三重県警察本部の公開型の交通事故情報オンラインマップを知った。詳細を三重県警へ問い合わせ、熊本県警でも対応できるかを調査した。
調査の結果、三重県警で利用していたクラウド型 GIS の ArcGIS Online は、専用のサーバーを用意する必要がなく、公開用データの加工作業が少なく、本部のみで公開までの作業が完結することを評価し、熊本県警でも採用することを決定した。
また、交通事故情報を公開の際には、すぐに利用できる ArcGIS Solutions の交通事故情報公開テンプレートが無償公開されており、交通事故情報のデータを用意するだけで、すぐに公開できることも選定要因の 1 つとなった。

課題解決手法

交通事故情報の公開にあたり、公開する情報と公開業務の効率化について検討を行った。公開情報については、交通事故情報管理システムからデータを抽出し、加工する際に、個人が特定されないように細心の注意を払い、以下の項目を表示することにした。

小学校区の採用については、PTA から事故情報の提供について要望が寄せられていたので、小学校関係で使いやすいように配慮した。

データ整形ツールの開発

公開する交通事故情報は、2017 年(平成 29 年)以降の情報にすることにした。交通事故情報管理システムからの対象データの抽出については、情報管理課がデータの抽出から ArcGIS Online へアップロードするためのフォーマットに加工するまでのツールを用意した。このツールは Excel の操作のみで行えるため、GIS のアプリを利用することなく、データ加工の作業が完了する。また、運用時でもそのまま利用することができるため、運用開始後には職員の作業負担を削減することができた。

情報公開の 3 つのアプリ

交通事故の情報は、デバイスと見せ方が異なる 3 つのアプリを用意した。

①交通事故発生状況ダッシュボード:交通事故の傾向を把握しやすいようにグラフと地図で事故状況を表示。

交通事故発生状況ダッシュボード
交通事故発生状況ダッシュボード

 

②交通事故発生状況マップ(PC 版):地図上で交通事故の発生箇所が示され、事故情報クリックで表示。

交通事故発生状況マップ(PC版)
交通事故発生状況マップ(PC 版)

 

③交通事故発生状況マップ(スマートフォン版):PC 版と同じ情報をスマートフォンに最適化し表示。小学生の親世代に普及しているスマートフォンで手軽に見られるように用意した。

スマートフォン版アクセスQRコード
スマートフォン版アクセス QR コード

 

効果

交通事故発生状況マップ

「交通事故発生状況マップ」は運用開始直後から、地元の TV 局や新聞で取り上げられ、マップのアクセス数も増加し、住民の認知度向上につながった。特に学校関係者や PTA からは好評を得ており、学校での交通安全教育等での利用に向けて使い方の問い合わせもある。
また、自治体から交通事故に関する問い合わせがあった際には、このマップを使うことで発生箇所の説明がスムーズに行えるようになった。

今後の展望

「交通事故発生状況マップ」が有効な情報提供ツールであることが分かってきたので、さらなる利用促進として、アクセス用 QR コードをつけたチラシの配布や安全教室での紹介、Twitter などの SNS での発信に取り組み始めている。

プロフィール


熊本県警察シンボルマスコット「ゆっぴー」



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資料

掲載日

  • 2021年1月6日