課題
導入効果
東京都心へつくばエクスプレスで約 20 分という近さにして、驚くほど緑があふれる流山市。その緑豊かな住環境を維持しつつ、”住みたい・住み続けたい街”づくりが進められており、転入が増えている子育て世帯向けに、保育や教育環境の充実に力を注いでいる。流山市にこれからも住み続けたいという市民が 83% と首都圏でもトップクラス(平成 30 年度ながれやままちづくり達成度アンケート)、流山市を希望して住まい探しをされた方が 60%(平成 30 年度転入者アンケート)と、流山市の住環境や都市環境への評価が高まっている。また、流山市民の意識はとても高く、防犯・防災における自治会の活発な取り組みに加え、生活に係わる殆どすべての分野で、市民団体や NPO の活動が展開され、多くのイベントが開催されている。
このような背景のもと、さらなる市民へのサービス向上のため、庁内のデータとシステムの共有化及び有用なサービスの提供が必要であった。このための部署横断的な会議体を発足し、検討を重ね、ArcGIS の導入に至った。現在は、多くの課題解決を図る GIS のサービスが立ち上がっており、さらなる進歩に向けてポータル導入の検討を始めている。
データやシステムの導入は部署単位で個別に計画、購入し、使用していた。このため、その情報は共有されておらず、他の課が同じようなデータを持っていることを知らずに、また新しくデータを作ることがあった。この結果、ライセンス費用や開発費がかさんでいた。このような状況から、職員が情報を共有できる仕組みの導入を目指すと共に、経費を抑える必要があった。
どの部署がどのようなデータを持っているのかがそれぞれの部署間において明らかになっていなかったため、GIS を使っている部署をまたぐ会議体として、統合型 GIS 活用部会を発足した。ここでは、各部署の保有データを把握し、GIS の利用状況について棚卸することから開始した。また、現在必要とされているデータ、今後必要となるだろうデータについても議論した。同時に、外部や市民に公開でき、課題解決を図れる有用な情報についても検討を行った。
次に、自治体GIS利用支援プログラムにより ArcGIS の評価版を複数部局で試用し、自治体業務で ArcGIS が十分に利用できることを確認した。
政策支援で利用する GIS 製品についてはソフトウェアの出典が必要となるなど、信頼性が重要な選定要素でもあった。また、高度な分析を行いたいというユーザーの要望や、学生のときに ArcGIS を使用していた既存ユーザーが多くいたことも、採用を決定する後押しとなった。最終的には、統合型 GIS や個別業務での利用、そして日常業務における汎用利用等、様々な業務に対応が可能な GIS という理由から ArcGIS を採用した。
自治体向けの特別ライセンスであるサブスクリプション方式の ArcGIS 自治体サイトライセンスを採用することにより、コストを抑えた庁内 GIS プラットフォームを構築することができた。そして、庁内に点在していた GIS データの一元管理と共有化を行った。これにより、ArcGIS をベースにしたアジア航測株式会社の統合型 GIS と建築住宅や資産税、都市計画の個別業務アプリケーション、そして公開型や EBPM・政策形成支援に関わるクラウド GIS やデスクトップ GIS アプリケーションの利用が可能になった。具体的には、次のような公開型のマップを提供したり、庁内での業務に活用したりしている。
要援護者の情報作成にも ArcGIS が利用されている。流山市では、約 11,000 人の要援護者を約 160 人の民生委員および約 180 の自治会に割り当てている。要援護者は年間約 1,000 人の新規登録があり、以前は民生委員が要援護者 1 人ずつについて名簿から紙地図上で場所を特定していたため、かなりの時間と労力を要していた。
GIS でジオコーディングすることで、毎年新規登録される要援護者 1,000 人を民生委員および自治会に一括で振り分けることができ、配布用の地図作成まで含めても短時間ですべての作業を完了できるようになった。 また、背景地図として利用しているゼンリンの地図を市が一括購入することで、使用料を抑えることができるようになった。
流山市はシティプロモーションがうまくいっており、人口が増加し、子育て世代が増えている。土地の開発も進み、地番も急速に変わっているため、現実のスピードに即したデータ更新が課題である。
さらなる活用として、データに基づいた政策立案や業務の遂行を実施したい。
また、災害が発生した際には、ベテラン職員でなくても応急判定を現地で調査入力できたり、自分の業務でなくても、どこにどのようなデータがあるのかが分かる仕組みが必要である。普段の業務と災害時の対応との両方ができるようにしたい。
Web アプリとして共有できる仕組みとしてのポータル導入も検討していく予定で、それにより各自の課題解決のための主題図を自由に作成できると思われる。
最後に、オープンデータとして公開しているデータがあるので、これを職員がサイトからダウンロードして使用、編集するというフローも組み込んでいきたい。