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送電設備の巡視点検業務における効率化を目指して

中部電力株式会社

 

SMART TAB で各種情報をリアルタイムに共有できるようになり、巡視点検業務が劇的に変わった

■概要

中部電力株式会社 本店
中部電力株式会社 本店

中部電力株式会社(以下、中部電力)は、中部地方(愛知県、岐阜県、三重県、長野県、静岡県富士川以西)を主な営業地域とする電力会社である。中部地方は、北に日本海、南に太平洋、内陸部には日本アルプスと海と山に囲まれた、見どころの多い魅力的な地域である。この地域内の約 1,074 万世帯に対し「一歩先行く総合エネルギー企業グループ」として暮らしに欠かせないエネルギーを供給している。中部電力は、2020 年(令和 2 年)
4 月に分社化を行う予定である。この分社化により持株会社となる「中部電力株式会社」、送配電事業会社である「中部電力パワーグリッド株式会社」、販売事業会社である「中部電力ミライズ株式会社」が誕生する。

コーポレートスローガンは、「むすぶ。ひらく。」。ひとびとの暮らしや社会構造が大きく変化する中、エネルギー事業で培ってきた使命感や技術力、提案力などをもとに、「人と人」「人と社会」「技術と技術」をつなぎ、むすび合わせることで、人の可能性と未来をひらいていく。

■課題

山地の巡視路を進む
巡視点検風景

都市部から遠く離れた発電所で作られる電気は、高圧の状態で送電線を通り、変電所まで送られる。変電所では電気を使用目的にあった電圧に変換して消費地に分配する。
送変電部は、主に「電力系統の設備計画の策定」、設備計画に応じた「建設工事の実施」、設備の定期かつ台風や雷などの荒天時における「保守管理の実施」など、発電所から変電所までの長距離において、電気を安全に輸送するための業務を担っている。送変電設備には、電気を送る送電線とそれらを支える鉄塔、電圧を変える変圧器等などがある。山頂に悠然と聳え立つ鉄塔を目にしたことがある方は多いと思うが、そこは普段殆ど人が立ち入ることが無い山中となる。送変電部では、電力設備の保全と 経年劣化による異常等の早期発見を目的に巡視点検を行っている。巡視点検では、電力設備の状態を調査員が実際に目視で確認する作業となる。

従来、巡視点検は、以下のフローで実施していた。

①事前準備

 調査エリアの地図や調査票等の紙書類を準備する

②巡視点検

 事前に出力した地図、調査票の他に筆記用具、双眼鏡、カメラなどの道具を持って出発。
 紙地図を片手に山道を歩いて調査対象となる鉄塔へ。鉄塔や巡視路で確認した内容を、手書きで
 調査票に記入していく。

③事後作業

 一日中歩き回っての点検業務を終えて事務所に帰社。
 帰社後、手書きの調査結果を写真と一緒にパソコンで報告テンプレートに入力。
 入力後、報告書として紙出力し、社内の承認フローに回して一連の業務が完了。

また、点検や設備の異常管理は、紙帳票とデータで 2 重管理していた。この一連のフローは、効率が悪く、そのため、タブレットやスマートフォンで動作する新システムを開発する運びとなった。

■ArcGIS 採用の理由

新システムは、ArcGIS Runtime で開発されたモバイルアプリ部分が「送電モバイルアプリ(以下、送電モバイル)」、送電モバイルが動作する iOS のモバイル端末自体が「SMART TAB」と名付けられた。
送電モバイルを開発するにあたり、GIS エンジンの検討を開始し、最終的に ArcGIS を採用することに決定した。

「ArcGIS は、他の GIS エンジンに比べて標準的に備わっている機能が多いと聞いていました。また ArcGIS は、IT 標準の技術に準拠して開発されているため、特定の一社に縛られず、色々なシステムベンダーの協力を得られると思いました。その上 ArcGIS は、世界中に沢山のユーザーがいて、それらユーザー向けにグローバルイベントも開催されています。ArcGIS という共通言語を通して、世界中のユーザーとシステムの改善点などを協議できることは、非常にメリットが高いと感じました。」と角屋氏。

■課題解決手法

送電モバイルの開発にあたって、既存システムからの改善点が検討された。

・作業を効率化し、仕事の絶対量を減らすこと
・事前準備をなくすこと
・紙をなくすこと
・操作性に優れて使いやすいこと
・オフライン環境で使用できること
・調査項目のデータ入力を現地で完結
 できること

SMART TAB

これら改善点を実現すべく開発が進められた。

■効果

巡視点検風景
巡視点検風景

まず仕事の絶対量を減らすために、事前準備、事後作業を無くすことが検討された。既存システムでは、事前準備として点検帳票や地図といった紙を準備していたため、時間を要していた。SMART TAB では、数百台の全ての端末が毎日オンラインでリフレッシュされ、地図、図形情報、属性情報が最新に更新される。これにより事前作業がなくなり、点検時は SMART TAB を持ち出すのみでよくなった。ユーザー操作は、地図を起点に選べる仕様とし、ステップ数を減らした。また SMART TAB は、オフライン環境でも使用することができる。さらに現地で入力した情報もオンライン環境になるとサーバーに送信でき、事務所での事後作業が無くなった。そして紙自体をそもそも無くしたことで、報告書の承認フローからも紙が消えた。その結果、紙の報告書を整理する必要が無くなり、損失リスクと管理トラブルの削減に貢献した。

「SMART TAB のお陰で巡視点検業務が目に見えて効率化され、仕事の絶対量が大幅に削減されました。鉄塔までの道は、本当に獣道です。送電モバイルは、先人が通った紙地図に記載した巡視路をデータ化し、GIS 上に登録しています。送電モバイルでは、自分自身の位置からバッファを作成することができ、仮にバッファを 3 m に設定すると巡視路から 3 m 外れるとアラートが鳴り、巡視路から外れたことを知らせてくれるため、地図を見ながら歩く必要もなく、安全性も確保できます。また自分 が歩いた軌跡が残せるので、巡視路の見直しができ、巡視路の精度を上げることができます。この他に GIS の追加機能としてメモ機能を開発しました。共有したい情報の位置を特定し、写真を撮って、メモを残せます。巡視路の登り口や、車両の駐車場所、道路状況などを紙地図に写真を貼るかのように共有できます。この他にも送電モバイルでは、他の調査員の現在位置も表示することができます。山中であっても誰がどこにいるかがわかるので作業性や安全性も向上します。現地で情報を共有できるということは、本当に素晴らしいと思います」と 田中氏。

SMART TAB 画面
SMART TAB 画面

■今後の展望

「地図は業務における共通プラットフォームになれると思っています。電力の仕事は面的に広がっているため必要となる情報をどんどん地図データ化して、電力業務のプラットフォームを構築していきたいと考えています。また ArcGIS によって色々なアプリを早期に開発できる環境になりましたので、スピーディーに開発を進めたいと思います。」と最後に田中氏が今後の思いを語ってくれた。

プロフィール


電力ネットワークカンパニー
送変電部 技術戦略・開発グループ
田中 秀典 氏(左) 角屋 侑宜 氏(右)



関連業種

関連製品

導入協力企業

株式会社オージス総研
組織名株式会社オージス総研
名古屋オフィス
住所〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-17-13
問合せ先営業本部 中部日本営業部
電話番号052-209-9390
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資料

掲載日

  • 2020年1月7日

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