ビジネスにおける地図の活用事例集
69/70

建築工事の施工中・施工実績ある条件でプロットした取引先業者Case Studies Vol.17ることだった。旧システムで利用していた地図の更新時期を迎え、GISを複数のベンダーから検討することになった。時を同じくして、別件で地図アプリの作成が必要になった。短納期だったが、ESRIジャパンのセミナーで「ArcGIS Onlineなら簡単に地図アプリを作成できる」と聞いたことを思い出し、試しにArcGISでアプリを作成した。この際、身をもって作成の手軽さを感じ、採用に至った。そもそもArcGISを初めて導入したのはさらに数年遡る。海外の現場でも顧客に出す資料はもちろん、日本では当たり前の作業所案内図を作ることになり、利用できる海外地図を探していた。Googleマップ等も検討したが、著作権による制約が課題となった。その調査の過程でESRIジャパンのセミナーに参加し、営業担当に話を聞いた。そして、印刷時に使用許可申請が不要で、全世界の地図が配信されているArcGIS Onlineの背景地図から利用することとした。当時はメインで他社GISを利用し、海外地図が必要な際はArcGIS Onlineを用いるというように2つのGISを両立させていた。システムの移行にはESRIジャパンのコンサルティングサービスを利用した。土木や建築、不動産の各Web GISアプリを社内の基幹システムと連携させた他、ArcGIS Web AppBuilder (Developer Edition)を利用して独自のウィジェットを作成した。それぞれのアプリは社内の同一プラットフォーム上に載せ、すべての社員や支店からアクセスできるようにしたことで重複投資を避けた。また、旧システムには多くの機能が搭載されていたが使われていない機能も多くあった。そこで、社内でアンケートを取り、旧システムの機能に優先順位を付けて機能を絞った。このように極力カスタマイズを避けることで、ArcGISのバージョンアップに対応しやすくするとともに開発コストを抑える工夫をした。ユーザーとキャッチボールしながらアプリを作成できることが一番大きな効果だと上原氏は語る。業者に作成を依頼する場合は、仕様を出し、設計から始まりと多くの時間が掛かる。ArcGISではノンプログラミングでアプリを作成できるので、自身で簡単に作成できるようになった。「こんなアプリが欲しい」と、ざっくりとしたイメージでユーザーが上原氏の元へ来ることも多いという。その時にある程度ものを作って見せると相手もイメージが湧き、イメージと違うところは修正する、というようにコミュニケーションを取りながら、細かいニーズに柔軟に対応できるようになった。結果として業務の効率化にも繋がっている。また、同一プラットフォーム上に各部門のデータが揃っているので、必要な組み合わせを考えながらアプリを作成、共有することもできている。さらに、EsriがArcGIS Online上に公開している様々なGISデータも、スピーディーにユーザーのリクエストに応えることに役立っている。従来はデータの提供元からデータを入手してGISデータに加工する手間が掛かっていたが、今ではArcGIS Onlineからデータを追加することで瞬時に完了する。運用については各部門の担当者が地図アプリから情報を更新しており、例えば不動産のアプリは営業担当者がポイントの追加から属性情報の更新まですべて行っている。最近になり社内でGISが認知され始めてきたという。2~3年前はGISの認知度が低かったこともあり、オンライン地図は担当物件のポイント1つと周辺のビル名等があれば十分であった。最近では、レイヤー (重ねる)という概念が認知され始め、GISとしての活用が進んできた。2019年末頃からは特に引き合いが多く、営業担当者から提案ツールとして利用できないかという要望もある。また、自然災害が続く中で、ArcGIS Onlineの災害データを活用して、ハザードマップと同社の不動産や施工実績を重ねて社内で公開したり、災害後に施工物件の被害状況の現地調査に活用したりすることも考えている。「地図に残る仕事をしているのだから、地図をベースに色々なものを載せるのが筋」という考えの基、既存アプリのブラッシュアップに加えて、今後もGISのさらなる活用が期待される。*本稿は2021年1月に作成されたものですプラットフォーム活用■課題解決手法■効果■今後の展望活用事例ユーザーとの対話的なアプリ作成により業務が効率化

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る