ビジネスにおける地図の活用事例集
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AIとロケーションインテリジェンスでビジネスインサイトが明らかに実店舗とオンライン上の双方で製品を販売する企業は、奇妙な現象に気付き始めている。それは、実店舗販売とWeb販売は、今まで経営陣が想像していたようなパイの奪い合いにはなっていない、ということだ。長年の思い込みに反し、実店舗を構えることで同じ地域のオンライン販売の売り上げが減少することはなく、その逆の現象がしばしば起こる。実店舗が存在することで、周辺地域のオンライン販売が促進されるのだ。「ハロー効果」として知られるこの現象に魅了された最先端の小売企業経営者の多世界でも有数の小売企業数社が、事業拡大計画にむけた新手法を試み始めている。単純な概念でありながらアプローチが革新的なこの新しいビジネスツールは、企業の長年のニーズに応えるものだ。中核を成すのは、ある地域の潜在的市場から予測収益を計算する強力な予測エンジンだ。しかし、際立って特徴的なのは、チャネルの垣根を越えて分析する力だ。実店舗での商品販売とオンラインによる購入は、それぞれ独立した現象のように見えているが、このツールにより、お互いの関連性が明らかになる。この手法はハロー予測と(Halo Forecasting)と呼ばれ、人工知能と地理空間クラウドの力を組み合わせ、これまでの経営者の事業計画手法を変えるものである。本記事は、その仕組みを説明したものだ。くは、この効果の収益への影響を予測しようと試みたが、失敗に終わっていた。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、ハロー効果により実店舗の売上が20~30%増加する可能性があると見積もっている。だが、経営陣には全体平均ではなく、特定の地域の特定の店舗からどのくらいハロー効果による収入が見込めるのか、正確な予測が必要である。今では、人工知能、ビッグデータ分析、そしてロケーションインテリジェンスの革新的な融合により、企業はハロー効果による収益がどれくらいになりそうか、数値として把握できるようになりつつある。ハロー予測プログラムは、クラウドコンピューティングとAIの学習機能を使い、店舗販売やデジタル販売を決定づける無数の要因同士の複雑な相互関係を分析することができる。さまざまな種類のデータから、複雑な分析結果がそれぞれ得られる。最も重要な情報は次のとおりだ。・ 既存市場における小売店の店頭販売とオンライン販売に関するデータ・ 高度な人口統計データ・ 出店予定地の位置と周辺に住む消費者の位置との間の複雑な空間的相関関係ハロー予測は、GIS機能を搭載した地理空間クラウド上で動く。最新のGIS機能により、関係者なら誰もが欲しがる世界中の消費者関連の人口統計データにアクセスすることができる。また、設定したターゲットグループが実店舗とWeb上の双方で企業の売上にどれくらい寄与しているかも明らかにできる。ここでは、ミネアポリス・セントポール都市圏での出店に向け、販売見込高の高い地域を特定していく。このエリアに出店した場合の潜在的価値を計算するには、その店舗と潜在的顧客との近接性を測定する必要がある。機械学習モデルがハロー予測を行うためには、この測定結果が欠かせない。GISを使うと、消費者が店舗まで車で行く際にかかる現実的な時間が計算できる。また、ビッグデータを処理する予測ツールの機能を使い、徒歩や自転車で店まで行く際にかかる時間などの細かいデータも必要に応じて追加できる。■ハロー予測:事業計画における大きな進歩■競争優位に向けた予測■店頭販売実店舗とオンライン販売予測を組み合わせた店舗戦略策定AIによるハロー予測:

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