ビジネスにおける地図の活用事例集
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出力例:オフィス空間における集中度のヒートマップ全体のシステム構成図https://www.youtube.com/watch?v=HTjfDRBBbxoGISTA説明動画GISTAの中に取り込むデータには、大きくわけて位置情報と生体情報の2種類がある。屋内で位置情報を取得するにはビーコンやWi-Fiを設置する方法が知られているが、このような機器を至る所に設置するには手間と費用がかかる。そこで、より簡単に位置情報を取得することができるスマートフォンアプリを用いることにした。このアプリは海外の企業が開発したもので、GPS、地磁気、気圧などを複合的に取得し、AIで学習させることによってより高精度に位置を特定することができる。一方の生体情報の取得において、人間の集中等の正確な生理状態を評価するのに適しているのは脳波である。しかし脳波を取得するためにはヘッドバンドを付ける必要があり、それを長時間装着すること自体がストレスになる。そこで代替策として、脳波と比較的相関が高い「心拍」に着目した。具体的には、ヘルスデバイスを手首に装着することで心拍数と波形を計測し、得られたデータから協力企業の知見をもとに集中度、ストレス度、リラックス度、活力度などを算出した。そして位置情報と生体情報を統合するGISプラットフォームとして、リアルタイムGIS製品のArcGIS GeoEvent Serverを活用した。位置情報はほぼリアルタイムに、生体情報は5分に1回程度にまとめて送り、それらを5分ごとにマッチング処理することで、最終的にArcGIS上で空間的な集中度、ストレス度、リラックス度、活力度などを時間軸ごとに分析・可視化した。GISTAを構築し、屋内空間の快適性をほぼリアルタイムで可視化できるようになったことで、データに基づく定量的な空間評価をすることができるようになった。また解析結果はPCだけでなくスマートフォンでも簡単に見ることができるようになった。GISTAのプロジェクトを立ち上げた当初は「このプロジェクトにどれだけの価値があるのか?」と社内で懐疑的な意見を持たれることもあったが、いまでは「自分たちの部署でも試してみたい」という要望があり、200人規模での計測をすることができるようになった。さらに社内だけでなく、社外での学会発表や2023年(令和5年)に米国で行われたEsriユーザー会で事例発表を行った際には、発表後に参加者から多くの質問を受けるなど、大きな反響があった。社内での計測・評価により成果を上げることができたため、今後は社外のお客様へGISTAの提供を進めていく。「特に個人の生産性を上げたい企業や、最新技術を使って業務を改善したいと思っている企業へ提案をしていきたい」と氏は語る。2023年10月にはプレスリリースを出し、新たな顧客の開拓を目指している。さらに海外への展開も視野に入れている。特に、人口の増加に伴い、建物の建設需要が見込まれる途上国では本システムを活用できる場面はますます増えていくとみている。最後に氏は「GISTAにはGIS+DATA+ VISTA (眺望する、見る) という意味も込められている。GISTAを通じて将来自分たちが見たい世界を作る、これはまさに2023年のEsriユーザー会のテーマである”GIS – Creating the World You Want to See”と合致する。当社は1970年代米国Esriに日本国内で初めて大規模なプロジェクトを発注した企業であり、今後もGISを活用したGISTAを通じて、誰もが快適で生産性が高く、健康的に働くことができる未来をお客様と一緒に築いていきたい」と力強く語った。> ビジネス > 建設■課題解決手法■効果■今後の展望活用事例竹中工務店の革命的システム「GISTA」。快適性と環境を見据え位置情報と生体情報で未来のオフィス空間への扉を開く

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