ビジネスにおける地図の活用事例集
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S-BOX車両の位置を屋内屋外シームレスに地図上に表示Case Studies Vol.14S-BOXから送られてくる位置情報の可視化を担ったのがArcGISである。建物情報を含め機密情報厳守のため、Googleマップよりも、オンプレミスでの運用が前提条件であり、「システムを構築するにはArcGISが最適と考えた」と濱野研究員は語る。なった。しかし3つの信号を受信し携帯電話回線でサーバーへ情報を送るための受信端末は存在しなかったため、独自開発を行った。それがS-BOXである。試作段階では乾電池27本も必要な時期もあったが、その後テスト車のイグニッションON時のUSB電源供給方式に方針転換。また位置情報も、車両のエンジンのON/OFF時に送信、走行中は規定間隔で送信、テスト棟に入る直前に送信などのアイディアを投入し実用化を図った(濱野研究員)。開発当初は屋内と屋外の表示切り替えをインタフェース上でいかに分かりやすく表現出来るかの試行錯誤だったが、建物のCADデータを取り込むことにより屋内外の地図をシームレスに画面上に表示することができ、そこにテスト車両の位置をポイントで表示した。円の大きさは位置精度誤差で可変するようにして、屋内ではフロア階数までもが表示できる仕組みにしている。ユーザーはPCまたはスマートフォンでログインし、検索ウインドウから車両番号やコード番号などさまざまな方法で検索が行える。また逆引きで、選択したエリア内のテスト車両の数も検索できる機能もあり、他のテストコースに行っている車両の数なども簡単に分かる。管理画面からはIMESの設置位置や各種設定情報なども見ることができ、S-BOXと搭載車両とのリンク付けも管理画面から行うことができる。「テスト車両の引き渡しがスムーズになった。前の使用者が分からないときでも車両がすぐに捜索できる。」と社員からの言葉。S-BOXはエンジンON/OFF時のほか、テスト棟に入ったりする際にGPSをロストした位置情報も取っている。そのため、その車の最後の位置を見ればどの建物に入っているのか、もしIMESが設置されてない場所でも容易に分かるのである。北海道や栃木のテストコースにある車両ももちろん地図上に表示される。今回の仕組みで車を探すのにかかった時間は大幅に短縮され、開発に貢献できるシステムであることが容易に想定できる。位置情報以外にデータから分かってくるのはテスト車両ごとの稼働率である。よく使われる車両や、あまり使われていない車両が分かってくれば、もっとテスト車両が効率的に利用できるようになるはずである。さらにヒートマップを作成することにより、いつも車両で混んでいる場所の改善など、見えなかったものが見えてくる事による効率化への貢献が期待されている。今回のプロジェクトは、先を見越しての準天頂衛星の採用やIoT技術の採用、屋内外のシームレス表示の実現、そしてその導入効果の高さなど、「位置情報可視化の威力」を見事に体現したGISプロジェクトと言えるのではないだろうか。*本稿は2018年1月に作成されたものですFacility Management分野GPS、準天頂衛星、IMES(屋内測位)の3つの信号で測位■効果■今後の展望専用受信端末を車両に設置し地図上に車両位置を階までシームレスに表示■ArcGIS採用の理由活用事例

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