ビジネスにおける地図の活用事例集
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NADIActイメージ画像Case Studies Vol.17と感じた。GISのコアユーザーはArcGIS Desktopで解析やデータ構築を行い、それ以外のライトユーザーはArcGIS Onlineで多様な地理情報を活用するという構想が生まれた。 ■課題解決手法ArcGIS Online導入は、長年の課題を解決するための大きな1歩となったという。自社が保有する複数の自然災害ハザードデータをクラウドGISサービスであるArcGIS Onlineで一元的に管理したことで、Webブラウザから容易にアクセスが可能となり社内のGIS利用が促進された。さらにArcGIS Onlineをベースに開発されたALISの導入は、年間数千件の自然災害ハザード調査の作業を効率化し、評価精度の向上に貢献した。ALISに搭載しているTRCのデータコンテンツには、長年のコンサルティング業務で蓄積されたノウハウも反映されている。そこに顧客の位置情報を重ね合わせれば、複数種類のハザード値とマップが出力可能で、社内のレポーティングツールと連携させることで、さらなる業務効率化に成功している。また、公的なハザードマップよりも高解像度(5mメッシュ単位など)で作成されたデータも搭載しており、地図上で大縮尺・高い解像度での表示が可能となった。ALISの導入で、顧客物件位置における複数の自然災害情報がワンストップで検索、抽出、出力されたことで、作業の効率化や品質向上に加え、自社作成のハザードマップを掲載したレポートのプレゼンスは格段にアップしたという。ALISは国内の自然災害データだけでなく、グローバルのデータも搭載しており、東京海上グループの海外法人での利用も予定されている。試験利用では業務品質の向上に貢献できそうとのことだ。TRCも日系のグローバル企業や海外の投資先を対象に気候変動が事業に与える影響を評価するニーズが増えており、国内外を問わずGIS活用によるコンサルティング業務の高度化が期待される。TRCでのGIS需要は高まっており、将来的にはより高度でセキュアなGIS環境の構築も視野に入っているそうだ。東京海上グループは本業を通じての社会課題解決への貢献を標榜している。TRCは企業や自治体への防災・減災対策支援を通じて貢献しているが、一層の強化を目指しデジタル活用を促進している。そうした背景のもと、ESRIジャパンが開発・提供している防災情報配信サービス「NADIAct」のプロジェクトに参画している。NADIActはリアルタイムの防災気象情報や災害発生情報をArcGISプラットフォーム上で表示し、企業の各拠点における適切な防災・減災行動を促すアラート機能を持つサービスパッケージである。TRCはリスクマネジメントのプロフェッショナルとしてそのノウハウを提供し、災害時に着目すべき気象・防災情報のピックアップや災害状況に応じた推奨防災行動の指針の策定などを通じて、NADIActを監修した。昨今、災害情報提供のサービスがいくつかある中で意識したのは、顧客は判断に必要な情報を使いこなせているかということ。リスクコンサルタントとして「お客様へ届けきる」ことを念頭に監修を進めたという。「我々のノウハウをデジタルソリューションに組み込むことでお客様が必要な時に使えるようにしたいのです。そのためにはArcGISプラットフォームは最適な選択です。お客様の手元に多様なリスク情報やライブ情報を可視化するツールがある、ということが大切です。ここ数年、企業が備えるべきリスクの対象やスケールは急速に拡大しています。世界や状況の変化にしなやかに寄り添い、お客様に必要なものが“その時”に役立つよう、新しい価値を提供していきたいのです」と池田氏は語る。リスクマネジメントビジネスの新たな可能性を探っていく中で、お客様それぞれのニーズに合わせたGISソリューションの提供に将来性を感じているという。フレキシブルに機能やデータの追加が可能なArcGISプラットフォームは、今後のビジネスの拡張にも柔軟に対応できるだろう。*本稿は2021年1月に作成されたものですRisk Management分野■効果■NADIAct監修■今後の展望活用事例災害時の情報一元化と防災行動の判断支援を目指しNADIActを開発リアルタイムな防災・減災情報の提供が可能に

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