ビジネスにおける地図の活用事例集
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土砂災害警戒区域(国土数値情報)KP(点&線)資産(橋)テーブル資産(橋)の位置情報が自動生成リニアリファレンスでのKPマスタの活用NEXCO東日本が管理するエリアは国土の3分の1近くと広大であるため、前述の管理用平面図は全長が約4,000km、座標系は平面直角座標系で8系から12系まで及ぶ。このようにデータが複数の系にわたるため、1つの地図上で表現する際には座標系に注意をする必要があるが、ArcGISでは異なる座標系のデータ同士でも重ね合わせることができるため作業をスムーズに進めることができた。また、高速道路の業務はKP(キロポスト)で管理することが多いが、KPマスタ(緯度経度座標)の整備が重要だった。従来のKPマスタは100m単位だったものを10m単位まで精緻化した。このKPマスタを、ArcGISの機能であるリニアリファレンスと組み合わせて、橋梁等の資産の位置情報を表示する際に利用している。地図の描画レスポンスも、現場の業務効率に直結するので意識した。具体的には、管理用平面図をベクタータイルレイヤーに変換するといった工夫をした。危機管理や防災については以前のツールからArcGISと連携するツールに切り替えたが、スマホの位置座標からKPに変換して現地からの報告に付加する機能を実装するなど現場の職員が使いやすいものとなるよう気を配った。また、プロジェクト当初はGIS活用イメージが固まっておらず、どういう形で業務に役立てられるか明確に見えてはいなかった。そこでESRIジャパンのコンサルティングサービスを活用し、実際にアプリケーションを触って評価できるPOC環境を作った。ノンコーディングで素早くアプリケーション開発ができるため、それを使うことで実装すべき機能や最適なデータについて明確なビジョンを持つことができ、有益な開発支援だった。その他にも、地理院地図、国土数値情報など国が配信するオープンデータや、リアルタイムの防災気象情報、SNSに投稿された情報、プローブデータに基づく通行実績情報をNEXCO東日本独自の情報と重畳表示するなど、自社のデータ資産に各種情報を加えることで多面的な情報収集を実現し、防災対策検討や災害警戒時の状況把握に役立てている。2022年(令和4年)の冬からGIS活用を試行しており、冬に発生する吹雪等の災害対応において効果を発揮している。たとえば荒天の際に、どこで何が起きているからどこに集中して作業した方が良い、など意思決定に必要な情報共有が短時間化できた。またスマホアプリからの位置情報付きの情報が効率的に集約でき、同時多発的な広域災害での状況把握の効率化、関係部署への情報共有の短縮が図られた。現地からの報告の他にSNS情報やプローブデータも地図上にプロットし重ねられるため、外部の情報も組み合わせて現地状況を正確かつ詳細に把握できるようになった。他にもさまざまなオープンデータと重ねられるため、たとえば高速道路ができる以前の航空写真を重ねることで、整備前の土地の状況を知ることができ、土砂災害や浸水のリスクを知るなど災害時の背景を確認できるようになった。現在はArcGIS Onlineを使っているが、今後はArcGIS Enterpriseへ移行して全職員へ展開する予定だ。さらに、どこまで点検が完了しているかという情報は重要なため、現場の職員の現在および過去の位置を把握することが可能なArcGISのLocation Sharing機能を使い位置情報を共有するなど、迅速な状況把握を図りたい。他には、3次元データ、航空レーザー測量のデータを共有する仕組み作りや、基本点検時の現地からの写真共有の機能の利用を検討している。また危機管理と並行して、のり面の管理でもGIS活用を行っている。将来は、のり面の位置・地質に加えて収集したボーリングデータの共有や、古い資料のデータ化を検討していきたい。アジャイル開発で進めているため、引き続き継続してユーザーの声を聴きながら開発していく予定だ。> ビジネス > 道路■課題解決手法■効果■今後の展望活用事例激甚化・頻発化する災害に対して災害時のオペレーションを強化するためArcGISを用いて危機管理関連情報を一元的に管理するツールの構築に取り組む

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