ビジネスにおける地図の活用事例集
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Case Studies Vol.16庫の位置を公表しておらず、詳細を提供するのに消極的だ。そのような場合、SCRMチームはサプライヤーに直接コンタクトを取り、リスク管理に全力を尽くしていることを確認し、GMへどのような危機報告を行うかを明確に規定している。GMはまた、いくつかの企業と業務提携をし、事件や事故のニュースや自然災害情報データを取得している。データフィードをGISツールに直接統合することで、このシステムは世界中のさまざまな情報源を注視し、異常事態が発生した際、ほぼリアルタイムでアラートを受け取ることができるのだ。その結果、同社の保険料の年間支払額を削減することができた。サプライチェーンの維持という社会的責任を遂行するため、GMは政治的圧力の強い地域を特定し、戦闘や紛争に巻き込まれることのないようシステムを使用している。不安な時代である今、洞察力が増せば増すほど、企業活動の中断を回避する大きな力となるのだ。ができました」GMは、ロケーションインテリジェンスを企業全体の意思決定支援の重要なツールとみなす革新的な企業の1つである。GMにおいて、効果的なサプライチェーンのリスク管理とは、簡単に言えば異常事態を素早く検知し、その影響を軽減するために必要なアクションを迅速に起こすことだ。「即座に反応し、対応するための事前準備ができており、また、有事の際には積極的に行動する早さで優っていることで、我々は、内部と外部、両方の顧客への供給を維持することができるのです」とロッシ氏は言う。ロッシ氏はまた、データを使ってもリスクを完全に排除することは不可能だと認めている。次に大地震が起こるのは明日かもしれず、GMのサプライチェーンに混乱をきたすかもしれない。「その事態に対処するために最善を尽くし、備えておくだけです。GISのおかげで、我々は未知の事象に対処することができる。予測し、準備する立場にいられるのですから」と氏は語った。*本稿は2020年1月に作成されたものですDigital Supply Chain Management分野■まとめスピードの必要性GMのサプライチェーン危機管理者の一人であり主要な内部顧客でもあるビル・プリンス氏は、リスク通知システムにより自動車メーカーの対応に余裕が生まれると明言している。例を挙げると、2017年にメキシコ中部で発生したマグニチュード7.1の地震により、地域に多数あるサプライヤーの操業に影響があった。その時同時にイルマとハーヴィーという2つの巨大ハリケーンからの復旧作業中だったが、危機対応チームは、迅速に対処することができた。危機管理室が素早く立ち上げられ、GISで震源地から半径100マイル以内にあるサプライヤーが特定された。そこからのプロセスは簡単だった。サプライヤーに連絡し、無事と安全を確認後、被災した所があれば、物資などの支援が必要か確認をとった。次に入手可能な部品を管理し、パイプラインを復元し、組立工場間で配分する通常の運用を行った。この震災では、被災地域担当の実働部隊が約20の被災したサプライヤーの支援を行った。「このツールにより、以前よりもずっとピンポイントな対応ができるようになりました」とプリンス氏は言う。ロッシ氏によると、ロケーションインテリジェンスにより異常事態検出の速度や精度が大幅に向上し、GMの対応効率も向上した。ビジネスを途切れさせないためにGMにとって、サプライチェーンの地理的位置を理解することは、特定の事象がサプライチェーンにどのように影響するかを理解する上で不可欠だ、とロッシ氏は語る。 「その事象で影響を受ける輸送車両、部品の型番、具体的にはどこの工場か、などがわかるので、効果的な対応を取るのに本当に役立っています」ロケーションインテリジェンス導入前の危機対応プロセスは現在のものと非常によく似ていたが、サプライヤーや部品、プログラム、および車両への影響を十分に把握するのには数日から数週間かかっていた。データの優先順位付けと抽出に多くの時間を費やす必要があったためだ。「今では、GISのおかげで危機関連のコストを低減することができています。当社の工場がたった1時間停止するだけでも、販売店への配送や顧客感情に悪影響を与える可能性がありますから」とロッシ氏は言う。日常業務の中断もまた、自然災害と同じく脅威となりうる。先日、あるGMのサプライヤーが突然倒産した。そのサプライヤーは複数の部品を複数の工場に出荷していたため、影響を受けうる範囲が広がった。「倒産した業者から供給されていた各工場への材料の流れを非常に簡単かつ迅速に追跡することができました」とロッシ氏は言う。「これにより、倒産したサプライヤーが製造していた部品を代わりに作ることができるサプライヤーを特定し、復旧段階に入ること未来に向かってロッシ氏は、ロケーションインテリジェンスがGMの市場での優位性を促進すると考える。過去の異常事態発生の際、GMが一番に行動を起こしてきたことが理由の1つだ。「このことから、我々は災害などの発生後に他社よりも早くお客様に当社製品を提供できる立場にいると言えるでしょう」氏はまた、サプライチェーンのリスク管理は、業界全体を助けることができると確信している。ほとんどのサプライヤーには、世界中を監視するリスク管理プログラムなどない。「そこで、彼らの代わりに倉庫を監視しているのです」 とロッシ氏は言う。「もしどこかのサプライヤーで何かが起きた場合、危機管理チームが注意喚起を行うことになっています」活用事例世界5,500か所に及ぶ部品供給元の効果的なサプライチェーンのリスク管理

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