ビジネスにおける地図の活用事例集
3/70

店舗を中心とした商圏候補地の適合性解析の結果で、グローバルに展開をしているArcGIS製品に注目し、詳しく調べた。ArcGISの中には、多くの国の統計データが利用でき、商圏分析に関わるツールが豊富で、かつWebベースで利用することができるBAWebがあることを知り、さっそくトライアルを開始した。トライアルをしていく中で、BA Webは地域を限定せずとも、1つのGISアプリ上で各国の統計データを取得できる点が今後の業務の上でも活用の可能性が高く、非常に魅力を感じた。また、簡単な操作で作成した商圏内の統計データを基礎データとして取得でき、他の分析にも利用できる点も高評価であった。さらに、米国での店舗分析を進めていく中で、競合店のデータを分析するために米国内の店舗情報を持つPOIデータも追加で使用することにした。各種データの取り込み海外店舗での売上予測モデルの構築にあたり、国内店舗の予測モデルでも使用している指標を参考にした。人口、世帯数、年収をはじめとした最新の基本統計データは、BA Webに標準で搭載されており、すぐに利用できた。その中には、日本では使用しない人種や言語などといった米国ならではの情報もあった。さらに、競合店の情報となるPOIデータもBA Webに取り込み、自店舗周辺の状況を確認できるようになった。店舗開発モデルの構築BA Webで取り込んだ各種データと既存店舗の情報をマッピングし、そこから既存店を中心に運転時間商圏を作成し、その商圏内にある各種データを抽出した。そのデータと既存店の売り上げの比較を繰り返しながら、関連性の高い指標を導き出し、海外店舗に適した予測モデルを構築していった。その中でこれまで感覚的に把握していたアジア系人口の多さが、売り上げにどれだけ寄与しているのかを定量的に把握できるようになった。また、この予測モデルを基に、BA Webの適合性解析の機能を使用し、エリア内に複数ある出店候補地の比較を簡単に行えるようになった。データの活用以外にも、店舗周辺の現地視察の結果も予測モデルの構築に用いた。この取り組みにより、国内での店舗開発のノウハウを基に、海外においても信頼性の高い店舗開発モデルを構築できた。既存店舗においては、その商圏の状況を数値で把握できるようになり、新規の店舗開発においては、現地の支援企業が提案する候補地の評価や売上予測を行い、より適切な店舗開発の判断ができるようになった。また、統計データを地図上で見ることで、売上に関連する日本人の多い地域を把握できた。さらに、部内でもGISを活用することで、地域ごとのデータを集められることの認知が高まり、さまざまな分析の依頼が届くようになった。同課は、出店目標である2025年(令和7年)3月に2,500店舗、2028年3月に5,500店舗へ向けて、各国の統計データがすぐに利用できるBA Webで米国以外の国での分析も進めている。店舗開発モデルとしては、国内と比較すると、海外での店舗数が少ないことから今後さらなるモデルの精度向上を目指している。そのためには、国内の予測モデルで使用している交通量や人流データなど、海外では取得が難しいものや、データを取得できる店舗数の少なさを補うため、現地での分析に有効な情報の追加を検討している。BA Webにおいては、出店余地を探す機能など、さらに活用できる機能を評価し、候補地検索の作業効率化に取り組むことも視野にいれていく。> ビジネス > 外食■課題解決手法■効果■今後の展望活用事例ブランドのグローバル展開を支える店舗開発BA Webで海外の地域特性を分析

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る