ビジネスにおける地図の活用事例集
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ソーシャルディスタンスを配慮した屋内の什器配置を可視化Case Studies Vol.17業者は、新型コロナウイルスの影響による顧客プロファイルの劇的な変化を見てきた。毎週の食料品のニーズを満たすために5つの異なる店舗で買い物をしていた人が、接触を減らすために1つの店舗で済ませるケースも観察されている。同様に重要なのは、新型コロナウイルスの感染者数がさまざまな地理的領域で増減するため、各企業の商圏の状況をリアルタイムに監視する必要があることだ。一部の企業は、ArcGIS Dashboardsを介して、各店舗の近くの感染状況と規制状況を確認している。伝統的に、組織は店舗、レストラン、その他の小売スペースの設計を工夫し、多くの買い物客を引き付け、できるだけ長く滞在するように促す屋内導線を作成するのが一般的だった。現在、屋内導線は、ソーシャルディスタンスを確保し、一度に店舗にいる買い物客の数を減らすように設計されている。それにより顧客の安全を担保し、地域ごとの制限に準拠する必要がある。小売業者が屋内空間を管理するためにはまず顧客の密度分析を実施し、密度が設計値を超えた場合に警告を発する仕組みが必要だ。また、消毒用アルコールを適正に配置したり、顧客が集まる場所に従業員を配置したりする必要がある。店長は、顧客の安全に対し細心の注意を払うための情報が必要になる。パンデミック発生以前に小売店やオフィスのスペースを監視および改善する方法として、屋内ロケーションインテリジェンスが採用されてきたが、パンデミック以降この傾向は加速している。製造業と同様に、小売業者は従来、販売履歴データを活用して将来の収益を予測し、時系列手法に基づいて需要予測を行ってきた。過剰在庫を防ぐためのジャストインタイム在庫計画などの従来のフルフィルメント戦略は、消費者が購入パターンを変更するとその効果を失うことが判明し、小売業者は、デマンドセンシングに対してより機敏なアプローチをとる必要が出てきた。今後、新型コロナウイルスの感染状況の拡大と収束の谷間における店舗の閉鎖と再開による需給の変動性は新しい基準になる可能性が高い。小売業者は需要シグナルをよりよく理解し、それに応じて製品の品揃えを計画する必要が出てくるだろう。変動性に対応する際に、小売業者は、消費者のトレンドに遅れずについていき、迅速に対応するZARAのようなファストファッションの供給業者から学ぶのがよいかもしれない。これらのアパレル業者が最もよく認識しているのは、需要が地域間で均一に変化しないことだ。小売業者は常に店舗やレストランの地域に基づいて季節商品を計画してきたが、パンデミックにより、消費者の嗜好が急速に変化することがわかった。GISベースのスマートマップを使用して、売り上げがどこでどのような傾向を示しているかを追跡すること本稿は、以下米国Esri社記事を基に再構成された「Inside Bass Pro Shops’ Path to Business Continuity during COVID-19」「Think Tank: How to Reopen the Workplace during COVID-19」*本稿は2021年1月に作成されたものですで、小売業者の経営幹部は、需要シグナルの変化に応じて、先進的なファストファッションのプレーヤーのように振舞うことができるようになるだろう。これまで、小売業者は、サプライチェーンの敏捷性(つまり、代替ソーシングを使用する機能)ではなく、サプライチェーンの透明性(つまり、サプライチェーン内の商品の場所の可視性)に重点を置く傾向があった。これは、多くのセクターのサプライチェーンが概ね安定している場合は理にかなっている。しかし、パンデミック以降、消費者のトレンドが流動的になっている現在、小売業者は敏捷性に再び焦点を合わせ、サプライチェーンを多様化し、予期しない事態を回避するために冗長性を構築する必要がある。たとえば、地理的な多様性を生み出すために流通ネットワークを再構成する場合がある。この方法は、台風や地震などの自然災害の影響を受けやすい地域のサプライヤーによく使用され、脆弱性の低い領域で他のベンダーと提携することで、中断時にバックアップの供給と、非常に必要とされる俊敏性を生み出すことができるだろう。Market Development分野■ 屋内ロケーションインテリジェンスの活用が加速■ 需要の急変への対応活用事例コロナ期における購買行動の対応への考察

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