Case Studies Vol.18■ArcGIS採用の理由■課題解決手法■効果■今後の展望ライポス(モバイルアプリ)年月別の母子の群れのヒナ数ライチョウ> 資源管理 > 生物多様性ArcGIS Desktopを利用してきた経緯もあり、早速スマートフォン用モバイルアプリであるArcGIS Survey123を使用してくの一般の方に使って頂くためには、インターフェースの操作性を重視した、よりという声が上がった。そこで同様の機能AppStudioを採用して、長野県独自ブランドのアプリを開発することにした。利用きるよう、AndroidおよびiOSに対応させリットが活かされ、ユーザー視点に立ったまず、アプリ開発等に必要な費用をクラウドファンディング型ふるさと納税により調達しこの資金で絶滅危惧種ライチョウ目撃情ンラインに設置した。正確な位置情報の把握と、一般登山者をはじめ幅広い層から即時性の高い情報を多く集めるために、まず初めにスマートフォンを利用できないかと考えた。長野県の環境保全分野ではかねてより調査票を作成した。これを試行的に一部のユーザーに利用してもらったところ、「多ンストールのワークフローやユーザーイユーザーフレンドリーな仕様が望ましい」要件を満たし、多少のカスタマイズで柔軟に開発することができる製品ArcGIS 者の利便性も考え、アプリストアで提供でた。公開するまでの一連の作業は同製品で完結できたため、結果として、クラウド型GIS利用によるスクラッチ開発でないメ独自のスマートフォンアプリがわずか数か月でスピード開発できた。た。全国のアルピニストや登山愛好者などから500万円弱の寄付金が寄せられた。報投稿アプリ「ライポス」を開発。正確な位置情報と選択式設問による均質な状況情報、ライチョウの写真など、データとして活用できる形で収集可能な投稿ポストをオ「ライポス」開発と合わせて、ライチョウの生態図鑑等を公開するWebサイトも制作。ライチョウについて学べる内容にし、サイトと「ライポス」をリンクさせることでライチョウ保護への意識を高める設計で啓発活動への導線を作った。マップは一般公開しているが、不正確な投稿を減らすため、写真によるライチョウの同定や位置情報の整合性など、可能な範囲で目視による確認も行っている。スマートフォンを用いた手軽な手法や簡便で直感的な操作性のアプリを設計したことは、目撃投稿数を増やすことに一役買っている。投稿数自体の増減は、登山シーズンの影響や「ライポス」をインストールした人がライチョウを見かけられる確率など、単純な目撃件数としては語れない部分もあるが、少なくとも2021年6月末から運用を開始し、既に300件を超える投稿が寄せられている(2021年11月現在)。懸念されていた電波状況が悪い場所でのアプリ動作についても、オフラインで閲覧可能な地図を準備することにより、問題なく投稿可能となった。また、マップ管理業務では、投稿情報が電子データで蓄積・閲覧できるため、データ分析等が効率的に行える。位置や写真など精度の高いデータを蓄積していくことで、主要生息地での個体数の増減や保護増殖事業の効果判定なども可能となり、今後の効果的な保護対策の検討に役立てることができる。「『ライポス』の導入で、今後、より多くのライチョウの生息域情報が収集されれば、山岳毎の孵化から翌年の繁殖期までのヒナの生存率の把握や、これまでの調査では確認されていなかった生息地の確認や分布予測など、環境保全研究所と協働で解析していくためのデータとして活用できる」と自然保護課の峰村氏は語る。「どのように活用するかを示すことで、登山者の方が目撃情報を投稿する目的は明確になった。今後は投稿の動機付けやリワード制にするための機能改修、デザイン性の向上など、ライチョウを見つけられない時にもアプリを開いて学べるような遊び心のあるアプリにしていきたい」と期待を寄せている。活用事例登山者からの情報でライチョウ生息状況が明らかに長野県のGISを活用したライチョウ保護の取り組み
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