Case Studies Vol.21 11<分布調査実施時のアプリ入力画面>発見した鳥類の種ごとに個体数を入力できる。入力された分布情報はArcGIS Online上に蓄積される。<ワシ・カラス・カモ類を分類して可視化したマップ>希少鳥類と一般鳥類が接触する可能性がある地域が明らかになった。<調査結果確認用ページ>ワシ・カラス・カモ類を分類して可視化したマップや、調査結果地点数を種ごとに確認できるグラフ、各調査結果地点の詳細情報(調査者や発見鳥類および個体数)などを同時に確認できる。> 危機管理 > 感染症■課題解決手法■効果■今後の展望るようになった。そのため、参加者を募りやすく調査活動の円滑な実施に繋がった。ることで、調査参加者間のみで具体的なトである。これによりワシ類とカラス類が集中しているエリア、つまり「鳥インフルエンザ感染拡また、実際に鳥インフルエンザが発生した際には、周辺施設への風評被害などを考慮して位置情報は一般に公開されないことが多い。ArcGIS Onlineを使用す位置情報を共有できる点は大きなメリッ① 鳥類の分布情報の共有調査時に発見した鳥類種や個体数などの情報を、ArcGIS Field Mapsから簡単に入力できる。この情報はマップ上に表示されるため、位置情報と共に他の参加者の調査結果も確認できるようになった。② 希少鳥類と一般鳥類の分布情報の重ね合わせ調査結果として蓄積された約40種の鳥類を、ArcGIS Dashboardsを用いて“ワシ類などの希少鳥類”と“カラス・カモ類などの一般鳥類”に分類し可視化した。大の高リスク地域」が一目瞭然となった。調査結果を地図上に可視化したことで、ワシ類とカラス類が集中している地域が明らかになった。特定の地域で鳥類が集まる要因を分析したところ、観光客向けのワシ類への餌付けや、氷下待網漁(こおりしたまちあみりょう)の際に生じる雑魚の残滓(ざんし)が、鳥類を誘引していることが示唆された。集まっている鳥類の中にウイルス媒介個体がいた場合、フンなどの排泄物を介して他個体へ感染が広がる可能性が懸念された。このような感染リスクを回避するためには、餌付けの中止や残滓の適切な処理など、人為的な要因を排除することが重要だと考えられた。そこで調査参加者は、分布調査の結果を可視化した地図を用いて“感染リスクの高い地域”を明示し、“餌付け中止や残滓処理の徹底”を求める必要があることを行政機関に提示した。これにより、観光事業者・漁業者への迅速な注意喚起につながった。希少鳥類などの分布情報は、鳥インフルエンザ発生時だけではなく、平常時から蓄積・整理しておくことも重要である。CGISJでは他にも、希少鳥類の分布情報を収集するプロジェクトを実施中である。オジロワシ・オオワシについては、毎年実施されているカウント調査にて、個体数や行動などの情報を蓄積している。近年生息地が拡大しているタンチョウについては、個体数や成長段階などの情報を通年で収集している。このように、さまざまな調査結果の集約が可能となった最大のポイントは、全調査参加者がArcGIS Onlineという共通のシステムを利用していることである。今後もArcGIS Hubを使用して、さらに多くの調査参加者に協力を呼びかけることで、鳥類の分布情報を広域かつ高頻度で収集していきたいと考えている。そして、鳥インフルエンザ発生時には、これら蓄積された情報を活用して感染の高リスク地域を予測するなど、多様な用途に役立てられることを期待したい。さらに、これら鳥類の分布情報の蓄積の仕組みが調査参加者間だけではなく、行政機関(国・地方自治体)や市民団体との組織間での情報共有にも活用されることを目指したい。その実現に向けて、関係機関とのシステム連携を推進していきたいと考えている。ArcGIS Field MapsとArcGIS Dashboardsで実現するリアルタイム情報共有と可視化活用事例
元のページ ../index.html#53