自治体における地図の活用事例集
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Case Studies Vol.17■今後の展望 岡谷市統合型GIS(Web版) 道路情報投稿アプリのダッシュボード(左)と投稿フォーム(右)> 住民サービス > 統合型*本稿は2021年1月に作成されたものです情として受け付けてきた道路・水路等の損傷箇所情報を、誰でも投稿できるようになった。情報収集手段にこのアプリが加わったことで、業務効率化や対応スピードの向上に繋がっている。市民からも毎日投稿が寄せられるなど、反響は大きい。課題はまだ残る。まだすべての分野でGISが活用できているとは言えない。例えば、観光分野での活用はまだこれからだ。岡谷市観光協会と協働し、今年度「おかや観光ナビゲーション」が公開された。「くらしマップおかや」と連携し観光をテーマにしたストーリーマップが掲載されている。「くらしマップおかや」では、桜や紅葉が美しいスポットを投稿・閲覧できるアプリも公開しており、市民の反応も良いという。また、職員主導のGIS活用は、職員の一定以上のスキルを必要とする。職員全体のスキルの底上げだけでなく、定期的な異動による引き継ぎ、GIS専門員の後継に課題を残す。小松氏は「GISによって業務効率化が図れる分野は、まだいくらでもある」という。職員への周知や活用方法の提案、人材育成など、これからも継続して活動していく。「全庁でのGIS活用が日常的になり、膨大なデータを蓄積してきた。進化するArcGISを活用し既存業務の見直しと効率化を図るとともに、市民へ直結するサービス提供へと繋げていきたい」と、今後の展望を語った。システム面では、まず2016年(平成28年)、にデスクトップGISが導入された。当初はクライアントサーバー型のシステム構成として(平成30年)、ArcGIS Enterpriseを活用した庁内共有ポータルサイトの運用を開始。ウザーから簡単に閲覧できるようになった。こうしてすべての職員が必要なデータを閲とで庁内横断的な統合型GISの活用が増えプリの構築を行う。構築後は「岡谷市統合ると小松氏は考える。導入当初から変わらなて研修を年数回実施している。技術的な講習だけでなく、利用事例の共有や、どの業務に活用できそうかアイデアを募る場ともなっている。部署単位で研修を開催する機会も増えており、より業務内容に即した形で質の高い研修が実施できている。職員が使う端末の入れ替えを機に、全端末いたが、職員の各端末から直接データを閲覧するため起動に時間がかかることや、共有されているデータも有用なデータの種類が少ないなど課題があった。そこで2018年共有するデータも28種類に増え、Webブラ覧し、GISを活用する環境が整備された。組織体制・人材育成・利用環境が整ったこた。秘書広報課に寄せられるアイデアや相談も増えているという。「GISの利用はかなり根付いてきている」と小松氏は語る。秘書広報課に相談が寄せられると、GIS専門員(説田氏)が担当部署を支援しながらア型GIS整備活用基本方針」に基づき担当部署が主導で運用する。こうした運用の枠組みを整備することで、各部署のスキル向上を図り、さらなる活用に繋げていくことができいのは「職員自身の手で構築も運用も行う」ということ。一般的には外部委託するGISの専門的な業務も自分たちでやる。「職員から提案があった業務や効率化ができると思ったことを自分たちで実現できる。様々な分野に挑戦していける」と小松氏は語る。様々なニーズに応え、多種多様な業務で活用が進む背景にはArcGISの汎用性の高さも表れている。説田氏も「各職場のニーズに柔軟に対応できる」と魅力を感じている。課題解決の手段として益々の活用が期待される。現地調査業務での活用と市民投稿型アプリの公開ここ数年で業務改善の効果が高く活用が進んでいるのが現地調査アプリである。4年ほど前、農地利用に関する現地調査業務の担当課職員から調査時の負担軽減への要望を受け、運用を開始した。従来は住宅地図など紙媒体の資料を携行しなければならなかったが、現在はタブレット端末ひとつで済む。その後、防災訓練や選挙ポスターの位置確認、防犯灯のLED電球交換業務、空き家調査など、利用される分野も広がってきた。そのような流れを受け、調査フォームを公開し市民からの通報を受け付ける投稿型アプリも運用が開始された。2017年(平成29年)に公開された「鳥獣目撃情報投稿アプリ」は、リアルタイムに目撃情報を投稿・閲覧できる鳥獣被害対策の先進的事例として新聞等にも取り上げられた。2020年度(令和2年度)に公開がスタートした「道路情報投稿アプリ」では、電話や陳活用事例ArcGIS自治体サイトライセンス導入から10年、職員自ら構築・運用してきた岡谷市の持続可能なGIS活用と成功の秘訣

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