ArcGIS 事例集 Vol.17
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Case Studies Vol.1711 複雑な判定処理を可能にしたArcade こびまる設定資料こびまる™2020 Sapporo Medical University.(イラスト:Uzuki)> 危機管理 > 新型コロナ対応■課題解決手法■効果■今後の展望ArcGISプラットフォームの機能についArcGIS Onlineについては、機能的なトタイプを手早く作成しながら、関係者このため、「仮想ベッド」という概念を用いArcGISユーザー同士としてつながりが(Slack)を最大限活用しつつ、連日にわたるオンライン会議上で行われ、数日のうちに骨格が固まった。「COVID-19から人々を守る」という学生た。また、担当した小山助教は、それまでにも講習会などに積極的に参加し、て、ある程度の見通しを得ていた。特にWebアプリ構築が平易にできることから、スピーディーな展開が期待でき、プロがインターネット上で協業して構築を進められることが採用の決め手となった。最初は、ArcGIS Survey123を利用し、入居者自身が入力するスマートフォン向け調査票を作成することから開始した。調査票の作成自体は手早く完了したが、集約した情報の可視化に際して、個人情報保護の観点から、入居者の匿名性を保持しつつ、状況を総合的に把握できるように配慮する必要があった。て、現実の場所ではなく、各ホテルの上空に入居者の状態が表示されるような構成とした。この仮想ベッドについては、あった北海道科学大学の谷川琢海・准教授がマスターデータを作成し、小山助教が入居者データと部屋番号の紐付けを行った。これらに関する、ほぼすべての打ち合わせと作業は、メッセージングツールこの仕組みは、関係者のみならず、市民にも広く周知していくことが想定されていたため、並行してパッケージングにも注力した。からのモチーフをもとに、「こびまる」というキャラクターを作成し、入居者の健康状態によって色が変わるという設定まで行った。このキャラクターは、教員、さらには札幌市職員も協力の上、専門家がデザインして創造されたキャラクターであり、システム自体も「こびまる」と名付けた。2020年5月初旬、新たな宿泊療養施設の運用を開始するのに合わせ、「こびまる」の運用を開始した。休みなく行っていた電話によるアナログな健康観察から、デジタル移行することで、健康観察の負荷は劇的に軽減した。また、関係者がインターネット上で入居者の状態をひと目で把握できることは、情報共有にかかる時間的コストの大幅な低減にもつながった。また、ArcGISプラットフォームのArcade機能により、複雑な判定条件を処理して、色分けやシンボル設定を自動化できたことが、収集した情報の分かりやすい可視化に直結した。また、判定ロジックをArcadeでスクリプト化することにより、適宜変更される判定基準についても柔軟に対応することができた。このような仕組みにより、Webマップ画面だけで、入居者のうち、入院措置に移行する対象者などがひと目で把握できるようになった。また、日々蓄積していくデータについてはタイムスライダー表示を活用することで、状況の変遷も分かりやすく可視化することができた。これらの成果から、2020年11月現在では対象とする施設を増やして「こびまる」を展開中である。また、市民に発熱外来を紹介するための内部ツールも新たに構築しており、「こびまる」以外にもArcGISの活用が広がっている。設計の主導は札幌医科大学の小山助教が行い、北海道科学大学の谷川准教授が必要な助言をしつつ、札幌市の職員も手を動かしてデータのインポートやジオコーディング、Webマップの編集を手がけ始めている。これは、ArcGIS Onlineプラットフォームの柔軟でシンプルなアーキテクチャが、少ない学習コストでのアプリ構築を可能にしているためと言える。健康観察を行うべき対象は、今のところ拡大の一途であり、終息の時期はいまだ不透明である。蓄積されるデータの肥大化に対応するため、今後のスケールアップが検討課題となっている。また、この仕組み自体がワークフローとして機能することも視野に入れており、今後はArcGIS Notebooksを活用し、さらに現場の負担を軽減するための仕組みとして発展させていく予定である。加えて、今回の仕組みはArcGIS Onlineを活用したものであるが、蓄積したデータを解析し、今後の感染拡大対策に資するべく、ArcGIS Proを使った本格的な解析も行っていく予定である。ArcGIS Survey123を中心に、札幌市の感染症対応現場の作業負荷軽減と効率化に迅速に対応活用事例

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