ArcGIS 事例集 Vol.18
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Case Studies Vol.1815図2 計算格子の生成図3 スタジアムに流入する風の動き(北風)図4 スタジアム内に充填した仮想気体の濃度変化> 安心・安全 > 都市計画■効果■今後の展望らフィールド内に入り込む全体の流れをシミュレートした。計算時間は1風向当たりおよそ5時間程度を要した。フィールド内部に導かれ、全体を換気し(図3)。とが明らかとなった。すなわち、スタジアムることを意味し、通風を意図した設計が部がスタジアムの屋根とスタンドの隙間かシミュレーションの結果、風は複雑な渦を伴いながら風上の隙間と天井部からながら反対側の隙間から抜け出ていく現象をGIS上に可視化することに成功した観客の呼気を模擬した識別用の仮想気体をフィールド内全体に配置し、その仮想気体が流入空気によりどのように拡散・排出されていくのかを定量的かつ時系列的に計測した。その結果、スタジアムの外部で東京の平均的な3m/s風速で北からの風が吹いていた場合、スタジアムの内部の空気はおおよそ13分で入れ替わるこは1時間あたり4.6回の換気がなされてい自然風による換気効果を生んでいると言実際の風向や風速は時間や季節によって常に変化している。よってひとつの風向の結果だけでこのスタジアム全体の換気性能を測ることはできない。実用的な手法としては、すべての風向となる16方位シミュレーションをあらかじめ計算・蓄積しておき、リアルタイムな風況観測データや気象予報データに基づいてスタジアム内の換気状況を時間ごとに推定する手法が有効近年では世界中の都市で詳細な3D都市モデルが整備されており、デジタルツインとしてコンピュータ上で事前に都市計画える(図4)。もちろん、この換気量が新型コロナ感染対策として十分であるかどうかについては、実際の入場者数やスタジアム内での活動内容も加味して詳細に検討・評価する必要がある。本記事では北風の場合のみの結果を紹介した。となる。このようなリアルタイムの換気条件に関する情報は、施設の運営管理者にとってイベント時の適切な運営計画を検討するうえで有用な情報となるだろう。や社会システムの検討と影響予測に活用される時代を迎えている。これらの取り組みは、新型コロナの流行を契機に、人々の生活がニューノーマルへと変わる中ではさらに重要な役割を担うようになるだろう。地理情報のインフラとIoTセンサーが繋がり、都市のあらゆる場所の温度や風況がリアルタイムに取得できるようになれば、都市から建築までのさまざまなスケールでの環境改善にむけてより深い理解とより良い管理が可能となる。これに都市データと風況シミュレーション技術が結びつくことによって、都市や建築の計画者は以下のような安全で快適な空間を作り出すことができるはずである。・ 涼しく新鮮な空気を市街地に取り込み、ヒートアイランドを低減する建物・街路形状の計画・ 強いビル風によって歩行者の安全が損なわれないための対策・ 嵐の風荷重に耐えられるビル壁面や構造物の強度の検討・ 自然風による風を引き込み、建物の換気を促進し、感染対策や空調エネルギー削減を図る設計と運用計画・ 市街地における安全で効率的なドローン物流の飛行計画・運用管理世界のデジタルトランスフォーメーション化の流れの中で、地域の風環境を解読できるツールは計画者にとって有用なソリューションとなることが期待されている。詳細に再現された3D都市データを用いて新国立競技場の自然換気能力を精緻に評価新型コロナ対策の判断に活用可能活用事例

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