PROFILEPROFILE14Case Studies Vol.18株式会社環境GIS研究所 代表取締役 荒屋 亮 氏(左)九州大学応用力学研究所 准教授 内田 孝紀 氏(右)組織名:株式会社環境GIS研究所住所: 〒812-0054 福岡市東区馬出3-15-25-316問合せ先:荒屋 亮 氏Email:araya@engisinc.com組織名:九州大学 応用力学研究所住所: 〒816-8580 福岡県春日市春日公園6-1問合せ先:内田 孝紀 氏Email:takanori@riam.kyushu-u.ac.jp使用製品ArcGIS ProAirfl ow Analyst課題・環境と調和した都市・建築の計画づくりの高・自然通風による快適で省エネな空間設計・空間の換気による感染リスクの低減導入効果・市販の3D都市データコンテンツを活用し、ArcGIS Proで動作するAirflow Analystで、効率的な都市施設の風況シミュレーションを実現・半屋外となる新国立競技場のフィールド空まり間の換気性能を確認図1 3D市街地モデルの用意■概要■ArcGIS採用の理由■課題解決手法2021年(令和3年)に新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)パンデミック下で初めて開催された国際スポーツ大会のメイン会場である新国立競技場は、スタンドと屋根部分との間に一定の隙間が設けられており、外部の風をスタジアム内に効果的に引き込むための設計上の工夫がなされている。この風の通り道は、夏場の蒸し暑い時期にフィールドやスタンドの温熱環境を緩和することを目的の1つとして設計されていたが、スタジアムの換気性能として新型コロナの感染予防の面でも有効なのか?これを調べるため株式会社環境GIS研究所と九州大学応用力学研究所ではAirfl ow Analystを用いてスタジアム内の空気の換気解析を行った。シミュレーションの結果、市街地を流れる風が、スタジアム内部にどの様に引き込まれているかを明らかにした。さらに、観客の呼気を模擬した換気シミュレーションの結果、東京の平均的な3 m/sの風速で北からの風が吹いていた場合、スタジアムの内部の空気はおおよそ13分で入れ替わることが明らかとなり、通風を意図した設計が換気効果を生んでいることがわかった。ArcGIS Proと風況シミュレーションソフトの統合にはさまざまなメリットがある。特に重要な点としては、以下の4点になる。① ArcGIS Proの基本ライセンスで3Dデータの編集と可視化が可能② アプリが64bit対応となりメモリ上限が拡張され、マルチコア対応のため、大規模な風況シミュレーション演算が可能③ BIMデータ取り込み、オンラインベースマップの表示、地形や建物の3Dデータコンテンツが豊富であるため、手間なく複雑市街地のシミュレーションが可能④ 3Dデータのレンダリングや探索的解析が洗練されており、美しくわかりやすい都市空間の表現が可能市街地の換気性能の評価にあたって複雑な都市形状を高精度に再現することが課題となる。そこで、まず都市の3次元建物や樹木の形状を再現するために、AW3Dという商用3Dデータを利用した。また、新国立競技場の複雑な形状の再現には公表されている図面を元に3次元CADであるSketchUpを用いて形状モデルを作成し、それらをマルチパッチ・フィーチャクラスとしてArcGIS Proに取り込んだ(図1)。次に、対象地の風況を詳細に分析する必要がある。そのために、競技場を中心に1.3km四方を解析領域として設定し、計算格子の作成を行った。計算格子とは流体の計算に必要となる3次元のブロック状のメッシュデータのようなものである。今回はスタジアムの形状を再現するために1m間隔と細かめに設定し、約1,110万メッシュとやや大規模計算格子数となった(図2)。これらの計算格子を用いて、スタジアムの周辺市街地を通り抜け、その一ArcGIS ProアドインのAirfl ow Analystによる都市の風環境解析株式会社環境GIS研究所九州大学 応用力学研究所
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