ArcGIS 事例集 Vol.20
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技術開発本部 技術企画室 企画グループ課長 吉田 昌展 氏(左)技術開発本部 電力技術研究所 導入効果・高度な落雷リスク評価・落雷による電力流通設備被害の低減・合理的な落雷対策PROFILE組織名:中部電力株式会社住所: 〒459-8522 小椋 陽介 氏(右)名古屋市緑区大高町字北関山20番地の1使用製品ArcGIS Pro課題・落雷による電力流通設備の被害・電力流通設備における落雷対策の最適化・近年の気候変動における落雷の特徴や地域性の変化中部電力 技術開発本部 外観鉄塔への落雷44中部電力株式会社 (以下、中部電力)技術開発本部 電力技術研究所は、中部電力グループの技術研究開発を担う部門である。現場課題の解決に加え、2050年を見据えた経営ビジョン2.0実現のため、重点7分野(再生可能エネルギーの拡大、エネルギープラットフォームによる価値提供、資源循環事業の展開など)の技術研究開発を推進し、革新的技術の社会実装を目指している。経済産業省が公開している電気保安統計では、2021年度(令和3年度)に発生した送電設備における故障のうち、落雷が原因の故障が最も多かった。電力会社では、送電設備に落雷が生じても供給支障事故に至らないように設備設計をしている。落雷の特徴(雷電流の極性、大きさ、落雷頻度など)は地域によって異なることから、落雷被害の大きい地域を基準にして送電設備の落雷対策を一律に実施することは過剰な設備投資となり、電力流通費用の増大につながる。したがって、地域ごとの落雷の特徴を把握したうえで、適切な設備設計を行うことが望ましい。そこで、中部電力では歴史的に落雷頻度マップを作成し、これをもとに設備の落雷対策を実施してきたが、更なる合理化を検討するためにArcGISを活用した送電設備の落雷リスク評価を実施した。落雷対策設備の中には運転開始後50年を超過している設備もあり、将来的に合理的な設備更新が必要とされる。また、設備更新の工事期間中は落雷に対する送電設備の保護能力が一時的に低下するため、工事期間中における落雷被害の発生確率を十分に検討したうえで、工事の実施時期や期間を設定する必要がある。さらには、近年の気候変動は、落雷の特徴や地域性に変化を与えている可能性があることから、最新の情報やトレンドをふまえて落雷リスク評価をすることが重要となっている。送配電事業を行う中部電力パワーグリッド株式会社 (以下、中部電力PG)が既に運用開始している送変電地図情報システム(ArcGIS事例集Vol.19参照)はArcGISを採用している。落雷に関わる解析結果をシームレスに中部電力PGの業務に反映するためには、ArcGISをベースとした解析ツールの開発が望ましい。また、落雷と送電設備の位置関係を織り込んだ解析を実現できることもArcGISの採用理由の一つである。■概要■課題■ArcGIS採用の理由ArcGISを用いた電力流通設備の落雷リスク評価中部電力株式会社

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