ArcGIS 事例集 Vol.21
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Case Studies Vol.2139小学校周辺の走行量・事故発生地点分析(渋谷区)能登半島地震前後での走行データ:震災後に山中の道路が通行止めとなり交通がなくなっていることがわかる> ビジネス > 保険■ArcGIS採用の理由■課題解決手法■効果■今後の展望さらに、事故リスクの高いエリアを的確にるためには、データの統合や分析の高度きる点だ。テレマティクス保険を提供するなく、地域の地形や道路情報、事故多発あり、これらを一元的に可視化できる機能めて管理することで、交通事故のリスクがあいおいニッセイ同和損保は、ArcGISをGISの組み合わせによる高度な分析を活用し、地域の交通安全と災害時の迅速なまず、渋谷区の小学校周辺での取り組み特定し、そこに最適な安全対策を提案す化が不可欠である。必要なデータを一元管理することで、交通事故が発生しやすい地点や危険な運転挙動の傾向を特定し、地域に適した交通安全対策の策定に繋がる。同社がArcGISを採用した理由は、多種多様なデータを地図上で統合・管理・分析で中で蓄積される膨大な走行データだけで地点などの外部データも統合する必要がをArcGISは有している。ArcGISは、位置情報や速度、急ブレーキなどの運転挙動データを地図上に重ねるだけでなく、警察や自治体から提供される事故統計や生活道路の状況、さらには人口分布や地域特性といった異なる種類のデータも直感的に地図に重ねて可視化できる。こうした複数の情報を一つのプラットフォームでまと高いエリアや危険挙動が発生しやすい地域をより正確に把握できるようになり、従来のデータ分析では得られなかった新しい知見が得られるようになった。活用し、さまざまな地域の課題に応じた分析を行っている。テレマティクスデータと対応を実現している。についてである。このエリアは人通りや車の往来が非常に多く、通学路の定期的な安全確認が行われている。同社は、テレマティクスデータによる急ブレーキや急ハンドルといった危険挙動のデータをArcGISで視覚化し、さらに警察から提供された事故多発地点情報と統合することで、小学校付近の危険エリアの抽出を行い、リスクの高い場所や時間帯の傾向を可視化した。このような客観的なデータを根拠に通学路を点検することで、たとえば危険挙動が多発する場所を避けたルートを検討するなど、具体的な改善を行うための基礎データとして活用された。次に、能登半島地震の際の事例である。この震災発生時、同社はテレマティクスデータを通じて、被災地周辺の通行可能な道路状況を迅速に把握し、分析を行った。震災後、地域の走行データから得られる振動や速度の情報を活用し、通行が可能な道路と通行が困難な場所を識別することで、救援物資や支援車両の最適なルートを把握することができた。また、振動データを基に、道路の損傷が疑われる箇所を推定することができ、災害時における迅速な対応を支えるインフラ情報として活用することができた。ArcGISとテレマティクスデータを活用した取り組みは、さまざまな実績と成果を生み出している。その一つが、2023年(令和5年)度の「キッズデザイン賞」を受賞したことである。この賞は、同社が保育事業者の周辺の「交通量」と「事故の危険個所」を地図上に可視化し、散歩等の園外活動の際、使用する経路や目的地の安全確認に利用され、社会的な安全意識向上へとつなげる取り組みが評価されたものである。また、地図上でのデータの可視化は、社内において営業活動の支援ツールとしても使われている。データを地図上で可視化する環境が整備されたことで、営業担当者が各地の顧客に対してデータに基づく具体的な説明が可能となり、提案力が向上している。あいおいニッセイ同和損保は、今後もデータを活用して社会の安全・安心を支援する取り組みをさらに拡充していく方針である。これまで蓄積してきたテレマティクスデータに加え、データの精度やリアルタイム性を向上し、新たなデータを取り入れて、多角的な視点から地域社会の課題に対応していくことを目指している。さらに、同社がこれまでに培ったテレマティクス技術やGIS分析のノウハウは、自治体や企業が政策決定に役立てられるエビデンスの提供にも応用できると考えている。このように、今後もデータを通じて社会に価値を還元し、「事故を防ぐ保険会社」としての役割を果たしながら、安全・安心な地域づくりの一翼を担う存在となることを目指している。社会課題の解決に向けたデータ活用で交通安全から災害対応までを支える保険の新しいカタチ活用事例

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