ArcGIS 事例集 Vol.20
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ArcGIS Proによる最近接処理へき地度地図 (左:郵便番号単位 右:市区町村単位)25まず、郵便番号界のポリゴンデータと、二次もしくは三次救急病院のポイントの位置関係を把握するために、ArcGIS Proの「最近接」ツールを用いて、直近の病院とそこまでの距離を求めた。また離島かそうでないかを区別するために、二次もしくは三次救急病院のある島、または橋梁(道路、鉄道など)によりそれらの島と接続している島以外を「離島」と定義した。その際も「空間結合」等のジオプロセシングツールを用いて、これらの計算をスムーズに行い、最終的には郵便番号界ごとでへき地度合いを示すスコアを求めた。その後、求めたスコアをファイルジオデータベースに紐づけ、集計単位を市区町村、二次医療圏、都道府県に拡張し、十段階のグラデーションをつけた全国マップを作成した。郵便番号、市区町村、都道府県、二次医療圏ごとにへき地度を視覚的に分かりやすく示したマップを作成した結果、マップの発表後数か月で50名ほどの研究者から使用申請があった。さらにプレスリリースをきっかけに複数のメディアから取材の申し込みもあった。今回の研究によって、行政や各研究者の要望に合わせて、全国のマップだけでなく、都道府県単位のマップなど、より適切な地図も作成できる。また、この指標と予防接種率、健診受診率、がん検診受診率、先進医療や特定の手術の実施率などの関連情報を重ね合わせて地図上で見ることで、都市部と「へき地」で提供されている医療の違いが見えてくると考えられる。最近は医師偏在問題の解消のため、「地域枠」や「総合診療専攻医」など若手の医師に対しへき地勤務を義務として課すケースが増えているが、その時にどこが「へき地」なのかについて客観的な指標がない。「へき地」が行政やさまざまな地域の事情で決定されるため、若手医師が本来優先的に行くべき場所がどこなのか判断に困ることがある。この様な状況に客観的な指標を持ち込むことで、データに基づく意思決定につながると考えられる。本尺度を用いた別の研究では、へき地度ごとの医師の診療の幅を測定しており、へき地度が高い地域の方がより広い範囲の診療を行っていることが分かっている。このような研究をすることで、へき地医療の魅力や面白さも発信できたらと考えている。> 住民サービス > 医療活用事例■課題解決手法■効果■今後の展望医療における「へき地度」を日本全国の郵便番号ごとにスコア化ArcGISを用いて地図上にマッピング

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