ArcGIS 事例集 Vol.20
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■課題解決手法ごみの調査結果ArcGIS Survey123の調査票メディアを通し地歴部の活動を伝えている様子23知った。また、これまで紙地図で行っていた調査結果の集計作業は、操作が簡単なSurvey123であれば、生徒たちの手で調査結果の入力から集計までを行うことができると考えた。また、ポイ捨てされたゴミ状況の調査結果を基に自動的にデジタルマップが作成され、地域住民にごみの状況を共有できると考えた。早速、氏はSurvey123で調査票を作成した。その際に、回答のハードルを下げるため質問項目数は最小限に抑え以下の5項目を設定した。① ごみを回収した日時② ごみの種類(ペットボトルや空き缶等)と個数③ 実際のごみの写真④ ごみの回収場所⑤ 回収した河川や道路の様子についての説明当初は、生徒だけで調査を行う予定だったが、コロナ禍となり外出して調査を行うのが難しくなったため、市民にもごみの調査に協力してもらうよう生徒から提案があった。さらに生徒たちは、より多くの人に調査に参加してもらうため、地元の山陽新聞や学校のSNSなどでSurvey123の調査票のQRコードを掲載し、市民に参加を呼び掛けた。生徒たちの働きかけの結果、新聞の記事やSNSを目にした多くの市民によるごみの調査を実施することができた。生徒からシビックテックを促すことができた成果である。市民との共同調査の結果、山間部に落ちているごみも海に流れて行くことや、自分たちが住む区域の清掃状況がデジタルマップで明示された。紙地図からデジタルマップに移行し、便利になったというだけではなく、ごみが多いとわかった地域ではごみ拾いや清掃活動が強化されるようになるなど、活動がより具体的で問題解決に直結するものとなった。今まで地域のごみ拾いに関心のなかった市民がSurvey123を通して、ごみ問題への「解決者」として関わることを可能にした。また、Survey123で調査のハードルが下がったことで、生徒たちの自主的な調査につながった。生徒たちは旅行先でも Survey123を使って記録している報告もあり、楽しんで調査に取り組んでいる様子がうかがえる。このような活動を通して、生徒たちが自由な発想でのびのびとチャレンジすることができ、2018年(平成30年)の第2回Japan SDGs Award : SDGsパートナーシップ賞(特別賞)やG20大阪サミット2019での生徒による発表、2022年(令和4年)第26回ボランティア・スピリット・アワード 全国賞の高校部門3位など、数々の賞を受賞した。生徒には、自分たちの中で生じる問いを立て、行動し、成功/失敗する中で原因分析を行い、1つ1つ体験して学んでいく姿勢や、地域の人との触れ合いからコミュニケーション能力の向上にも繋がる効果もある。「アナログがデジタルになり便利になったこと以外にも、地歴部の生徒だけが主体的になるだけでなく、さまざまな人と協働して市民全体で解決できる問題であることを認識できたと思う」と氏は語る。引き続きごみ問題に対して、一人でも多くの人が当事者意識を持ってもらい、Survey123の調査票を一人でも多くの人に周知するため、その手段を今後も模索していく。また、2022年(令和4年)12月に開催された日仏海洋学会をきっかけに、2023年(令和5年)秋にはフランスの高校生とのオンラインでの海洋ごみ調査の活動プロジェクトが始動した。地中海は瀬戸内海と同様に閉鎖性海域であるため、調査の比較がしやすいと氏は考えている。それに向けて英語版のSurvey123 調査票作成に取り組むなど、国内外での更なる活躍に向けて取り組みを加速させていく。活用事例> 人材育成 > 地域政策・教育■効果■今後の展望生徒から市民への働きかけ地域のごみ調査活動のシビックテック

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