ArcConnect No.1
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第1回28ArcConnect 創刊号 2024.5■参考文献 ▲イアン・L・マクハーグ著/下河辺淳、河瀬篤美 総括監訳(1994)『デザイン・ウィズ・ネイチャー』集文社, p.45 ▲Paul A. Longley他(2001)『Geographic Information Systems and Science』WILEY, p.314 ▲L. Manawadu他(2016)『GIS MANUAL - VOLUME I』Department of Geography University of Colombo, p.3 ▲https://arts.cmb.ac.lk/geo/wp-content/uploads/2017/02/gis-course-material-2017.pdf ▲岡部篤行(2001)『空間情報科学の挑戦』岩波科学ライブラリー, p.24 ▲若林芳樹(2022)『デジタル社会の地図の読み方 作り方』ちくまプリマー新書, p.142 ArcGIS Proのような汎用的なGISソフトウェアは、さまざまな用途で利用されていますが、ひとつの大きな役割として、地図(=マップ)を作成する機能があります。そのため、地図の構造を知ることで、GISソフトウェアがより直感的に扱えるようになります。 地図(マップ)は、現実世界を記号化した図です。現実世界に 存在する、すべての「もの」の概念を地ちぶつ物(フィーチャ)と呼びます ので、地図は地物が描かれた図ともいえます。「地物」という言葉になじみがない方は、より抽象的な用語として、地理情報や、地理 空間情報の方がなじむかもしれません。地物は、地理空間情報を より具象化した概念です。 地物をよく観察すると、「建物」「道路」「区画」といった、共通の性質(テーマ)でグループ化できることがわかります。また、地図を 描く際に、道路を線で、区画を面でといったように、人は直感的に  レイヤーの起源は、1850年代にイギリス陸地測量部のジェームス・ヘンリー卿が発明した、フォトジンコグラフィーまでさかのぼることができます。これは、地図の作成、輪郭、彫刻、画像に使用するために写真のネガを亜鉛に複製する、当時革新的な方法で、コピー機の起源にもあたるものでした。 また、アメリカの造園学者、イアン・マクハーグが1969年に出版した『デザイン・ウィズ・ネイチャー』の中で提唱した、オーバーレイ 手法は、透明な地図のフィルムを作成し、それぞれの主題を描き、ライトテーブルの上に1枚1枚重ね合わせて分析し、社会的価値 点・線・面の図形を使い分けて描きます。このように、同じテーマを持つ種類でグループ化した主題を、レイヤーといいます。レイヤーは、「層」や「重ね」を意味する言葉で、レイヤーを複数重ね 合わせてできたものが地図(=マップ)となります(図1)。 地理空間情報をレイヤーとして捉える方法には、完全な正解がありません。たとえば、「建物」は、描きたい地図のスケールによって、点で表現したり、面で表現したりします。「道路」は、1つのレイヤーとしてまとめて捉えることもできますし、「一般道」「高速道路」といった、道路をさらに細分化した種類で捉えることもできます。 このような「さじ加減」を絶妙に導き出せるのがGISエキスパート と呼ばれる人たちです。を見いだすというものでした(図2)。これは、アナログの手法によるものでしたが、ツールがGISに進化した現在でも、基本的なGISの分析手法であるオーバーレイ解析として活用されています。建物道路区画現実世界レイヤーレイヤーレイヤー主題( テーマ )図1:現実世界と地図図2:マクハーグによるオーバーレイ 手法のオリジナル概念図地図( マップ )地物( フィーチャ )地図は現実世界を記号化したものレイヤーの起源GISの業務や研修などでよく使われる技術や用語の背景や仕組みを掘り下げて解説していきます。用語の理解が深まると、GISがより直感的に操作できるようになります。GISの基礎知識マップとレイヤー

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