ArcConnect No.1
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地図XMLファイルにはフォーマット仕様書だけでは読み取れない例外的なデータが存在します。幾つかの事例を紹介します。■ 地図XMLの座標系の判別 地図XMLファイルの名前だけでは公共座標・任意座標の区別がつきません。座標系は地図XMLファイル内のヘッダー部に ■ 筆界未定地の扱い 隣接地との境界が確定していない場所である筆界未定地については、地図XMLファイル内に、筆との対応関係を持つ筆界未定構成筆というデータが格納されます。ArcGIS Proのアドインツールを使用すると、筆のポリゴンとともに筆界未定構成筆のテーブルをインポートできます。筆界未定地を包含する筆界とその内部に存在する地番とを関連付けたデータ管理が行えるため、筆界特定申請や筆界確定訴訟などが行われる可能性がある土地の管理が容易になるでしょう。 海外の政府機関においては、地理空間データに関するガバナンスのもと、土地・不動産情報等を含むさまざまな地理空間データが、GISシステムで消費しやすく再利用可能な Web サービスの形態で公開されています。ニュージーランド土地情報局(LINZ)は、土地の境界や権利情報などをArcGIS Onlineのフィーチャ レイヤー3) やOGC WFSなどのWebサービスで配信しています。GISユーザーはLINZが提供するサービスを参照することで、サービスを経由してGISに常時最新データを、クエリや解析が可能なレイヤーとして組み込むことが可能です。日々アップデートされる土地・不動産情報のようなリアルタイム性が高い地理空間データの提供において、GISで再利用可能なWeb サービスによる配信 2024年4月15日には、最新の登記所備付地図の更新版データが公開4) されました。弊社ではArcGISで登記所備付地図データを活用するためのさまざまな対応を続けてまいりますので、今後もご期待ください。■ 座標系の定義と位置座標との乖離 地図XMLファイルに収録される座標系と位置座標が、実際の土地の場所と一致しないケースが見られました。埼玉県東松山市の事例は、地図XMLファイル上は任意座標系と定義されているものの、変換後のデータに東松山市の座標系(平面直角座標系第9系)を定義することで、本来の場所に位置合わせができたというものです。任意座標系のデータであっても投影法の再定義によってGISに展開可能なデータが一定数存在するのかもしれません。記載されています。ArcGIS Pro のアドインツールを利用すると、複数の地図XMLファイルの座標系を一括でチェックできます。は、効果的な提供手法ではないでしょうか。日本においてもこのような取り組みが進むことに期待します。 参考情報1) 変換ツール (国内データ) for ArcGIS Pro  https://doc.esrij.com/pro/get-started/setup/user/addin-tool/2) 法務省登記所備付地図データ - ArcGIS Online  https://www.arcgis.com/home/item.html?id=4ade0470798845608337e669ee0c92123) LINZ NZ Property Titles   https://linz.maps.arcgis.com/home/item.html?id=11ba5960f1d7472781310ad93ff2d9c64) 地図データのG空間情報センターを介した一般公開について  https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00494.html櫻井 洋祐(さくらい ようすけ)2006年、ESRIジャパン株式会社に入社。リモートセンシングソフトウェアやEsri社のソリューションプロダクトの業務を経て、現在は中央省庁を中心とした技術提案などに 携わっている。ArcConnect 創刊号 2024.521地図XMLファイルに関する留意事項海外政府における地理空間データとしての土地・不動産情報まとめ

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