ArcConnect No.1
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User Case Studies大阪市建設局では今、建設プロジェクトに関する情報伝達や連絡を省力化するため、積極的にDXに取り組んでいる。その情報活用のメリットを、市役所の業務だけでなく、市発注の設計や工事の受注者や、一般市民などの ステークホルダーにも広げていこうとしている。その一例は、2025年に開催される大阪・関西万博だ。「淀川左岸線2期工事の完成予定は2032年度ですが、万博開催時にはアクセスルート としても位置づけられており、建設中区間を暫定的に利用してもらい、来場者の移動などに貢献できるよう、ArcGISを使って工程などの管理を綿密に行いながら工事を推進していきたいと思います」と藤田氏は言う。ArcGIS上では現在、各工区が2次元で色分け表示されているが、今後は3次元モデル化して、工事の進ちょくをより分かりやすくすることも計画しているという。実践的で誰もがメリットを享受できる大阪市のArcGIS活用は、他の自治体のDX化にも大いに参考になりそうだ。ArcConnect 創刊号 2024.5工区内の各部分の色はタイムスライダーと連動し、進ちょく度によって色が変わるようになっている工区全体をカバーするように配置されたライブカメラのアイコン。ArcGISの画面上でクリックすると、ライブ映像が見られる大阪市建設局の事務所に設置されたライブモニターに映し出されたライブカメラ映像の一覧ある部分にどんなリスクや課題がある のかを参照したりすることも簡単だ。「従来の紙ベースでの情報共有から、クラウドに移行するための教育訓練の手間もほとんどありませんでした。事業についての情報を閲覧するだけなら、画面構成がシンプルなため2~3回使っているうちにわかってきます」(藤田氏)ArcGISには、工区内の約40カ所に設置したライブカメラのリアルタイム 映像もリンクされている。そのため、各現場で今、どんな作業が行われているのかを、事務所にいながら把握することができる。「180日間はクラウドで映像データが残っているので、なにか施工上のトラブルなどがあったときに後から確認でき、トレーサビリティーのツールとしても活用できます。台風や洪水などの時も、事務所にいながら各現場の状況を把握でき、いざ出動という時の判断にも役立ちます」と藤田氏は言う。0113過去から未来までの工程全体を関係者間で共有ArcGISを使って、この工事の情報共有システムを構築したのは、建設コンサルタントの建設技術研究所(本社:東京都中央区)だ。「ArcGISの存在を知ったのは、2年前の社内研修会でした。他部署がArcGISにBIM/CIMの3次元データを重ね合わせ、施工ステップを時系列で再現した事例を発表したのです。これを見て、事業監理やコンストラクションマネジメント業務に活用できると確信しました」と建設技術研究所 東京本社CM施工管理センターの田代晃一氏は振り返る。「その後、ArcGISについて調べたところ、ノーコードでアプリ開発ができるなど、やりたいことが比較的簡単に実現できる可能性があることが 分かり、導入することになりました 」(田代氏)現在、ArcGISでは、地図上に海老江ジャンクションの3Dモデルや掘割区間、トンネル区間を約60個の部分に分けて表示し、それぞれ「事前 準備」「支障撤去」「仮設工」「土工」「基礎工」など、進ちょく度によって 色分け表示されている。各部分の色は、工程表とリンクしており、ArcGIS上の「タイムスライダー」を動かすことで、年・月・日に応じて色分けが変わるようになっている。そのため、将来の現場状況を一目 瞭然で理解できる。他の工事関係者も、画面上でタイムスライダーを動かして確認できるので、工程全体にわたる情報を簡単かつ確実に共有できるのだ。また、リスクや課題などの情報も、随時、地図と相互リンクして追加できる。そのため、課題の一覧表から地図に飛んで位置を確認したり、地図上の大阪市建設局のDX戦略をArcGISが後押し

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