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「まあやってみよう」から始まる米国のGIS事情

掲載日:2007年7月23日

今年もESRI ユーザ会(ESRI UC2007)が米国サンディエゴで開催された。この会議は最先端のGIS情報把握の場であり、日本や海外の著名なGIS関係者との人的な繋がりの場である。会場が巨大すぎかつ発表数も多すぎて、おそらく全貌は誰も正直よく分からないだろう。そのうちシャトルバスでも走らせて欲しいくらいだ。小生は某所属組織のGIS技術者として参加する機会に恵まれ、主に環境分野を中心に見てまわった。

継続的に報告される毎年のユーザー事例を見聞するにつれ、特に米国の環境分野のGISの事例は着実に充実してきており、業務ベースでGIS利用が一層定着していることを実感できた。ESRIが理想とする、解析モデル、ソフト、データ等を地理空間情報のキーとして繋いでいく試みは具現化している。

有益なツールやデータセットについて枚挙にいとまがないが、例えばArcGISのエクステンションでは、クラーク大学が発表したLand Change Modeler for ArcGISが目を引いた。これは過去の土地利用変化把握と、それを利用した将来の土地利用予測、それらをさらに利用した生育生息地の推定予測、最後に環境影響評価まで一気通貫で行えるツールだ。このツール開発にあたって同大学は世界有数の自然保護団体であるConservation Internationalと共同研究を行い、このエクステンションはその成果の一つとのことであった。

またデータセットで興味深かったものとしてはLANDFIREプロジェクトの植生データを挙げたい。このプロジェクトでは山火事によって成立する貴重な生態系の保護管理を目的としたデータセットが作成されているのだが、データの1つであるExisting Vegetation Typeデータはランドサット画像と標高や気温などのGISデータと現地データと植生予測モデルを組み合わせて作成された植生データだ。日本では植生図がいつ完成するかよくわからない状態(過去のコラム参照)だが、このプロジェクトでは限られた予算と人材の中で植生データを作る方法を真剣に検討し、確実に実行していた。また、自然保護団体であるThe Nature Conservancyが植生凡例の基本的な設計や植生予測モデルの開発で重要な役割を担っていた。

ESRIのユーザー会に参加して毎年感じることは、アメリカでは「まあとにかくやってみよう」と考える感覚が強いことだ。

正直な話、ここで紹介したツールとデータの完成度はそれほど高くはないし、適用手法は日本の研究者の間でも知られたものであり、技術的には彼岸と此岸の差はない。

では何が特記に値するかと考えられることは、彼らの"Do it first, and think it later."精神である。つまり一定の理論的根拠があれば、細かいところまで求め過ぎず、ある程度行けそうならまず始めてしまう気質だ。

日本人のメンタリティからすると多少違和感もあるこうした姿勢はアイデア出しの段階では有効なアプローチになり得ると私は考える。実務の現場においてある種の改革を進めるとき、不確定なリスクを敢えて取りに行こうとするリスクテイカー達の卓越した行動力、成果をものにできる技術力、そしてこれがおそらく一番大切なことだが、改革に向けてリスクを取る人の行動をある程度許容して、あら探しに走らない周囲の雰囲気が少々うらやましい。

ESRIユーザー会に参加するとこうしたモラルに実際触れることができる。これがESRIユーザ会に参加する一番のメリットだ私は思う。家族連れでユーザ会の会場を歩く大勢のGIS技術者(写真)を眺めつつ、GISコミュニティの成熟ぶりを今年もまた実感した。

(コラムを書くにあたって参考にした情報源)
2007年度ESRI International User Conference(会議の内容がよくまとまっている。(日本語))


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