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踏みにじられた国境

 

世界中の国境紛争と領土問題地域をストーリーマップで巡る

 

米国Esri社が作成した世界中の国境紛争地域を地図にまとめたストーリーマップを紹介します。

今、世界で起きている国境紛争は解決がどれも困難なものばかりです。それぞれが固有の問題を抱えており、対立する国境の両側には複雑な思惑と、しばし攻撃性を持った国家とその指導者が存在します。対立する両者に受け入れられる解決策はそう簡単に見いだせるものではありません。

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解説

本ストーリーマップはテンプレートをカスタマイズしたものを利用しています。

 

1.世界の国境紛争地域と政治地理

国境紛争は、国境の現状維持を望む者と国境を交渉や武装闘争で変えようとする2者間で起きます。紛争が起こる原因は古代から続いているものや非常に入り組んだ問題を抱えているものなどさまざまです。しかし多くの場合は、天然資源の利権、輸送において戦略的に重要な地理的アクセス、民族や宗教的アイデンティティー、政治的な忠誠心をめぐった争いに起因します。

地図上の国境は、整然として見えますが、政治秩序はそれほど安定してはいません。歴史を振り返ると、1815年のウィーン、1919年のベルサイユ、1945年のポツダムなど歴史的に有名な国際会議の場で、新しい国境が引かれたこともありました。世界地図は、ダイナミックに変化する政治的現実を反映するため進展を続けます。

現在進行中の国家領域と境界線をめぐる紛争地域マップ

2.停戦境界線

この写真は、1951年米国と北朝鮮の交渉担当者が停戦協議の際に境界区域を設定している様子です。解決されていない紛争地域に停戦境界線を設定することは、未解決紛争に延命処置を施すようなもので、境界における不安定さが払拭されることはありません。 一見、一時的な「停戦」といった印象を与える言葉の意味とは裏原に、これらの境界線は何十年も続くことを意味しています。そして、停戦で力を分断された境界が次第に事実上の境界となっていきます。

ドローン飛行禁止区域

a. 北緯38度線 (北朝鮮-大韓民国)
北朝鮮と大韓民国との関係は厳密にはまだ戦争中です。国策プロパガンダなどの宣伝活動が行われ、時折衝突が続いています。

 

 

ドローン飛行リスク

b. サボテンのカーテン (グァンタナモ米軍基地-キューバ本土)
紛争の境界や停戦線に沿って造られた物理的な壁は、未解決の問題を象徴するものです。 グァンタナモ米軍基地は「サボテンのカーテン」という無人地帯でキューバ本土と隔てられています。およそ30キロに渡るフェンス沿いにはその名の通り、サボテンが植えられています。

 

 

ドローン映像

c. グリーンライン (ヨルダン-パレスチナ)
ヨルダン川西岸とのパレスチナ地域を区切る壁はイスラエルによって造られました。2000年から建設が始まり、1949年の「グリーンライン」という休戦国境に沿って続く壁は700キロに及びます。

 

 

ドローン映像

d. 係争地ナゴルノカラバフ (アルメニア-アゼルバイジャン)
1994年には停戦が成立しているアルメニアとアゼルバイジャンですが、両軍は境界に沿って警戒を強めています。今も時折銃撃戦が交わされ、今年(2016年)もアルメニアとアゼルバイジャンの兵士、100人以上が命を落としました。

 

 

3.島をめぐる領土主張

 

 

ドローン映像

北方領土 (日本-ロシア)
南クリル諸島は、日本とロシアの両方によって領土が主張されています。第二次世界大戦後、一連の暫定合意にもかかわらず、両国とその同盟国との間には諸島の定義を含めて対立した主張があります。最近の出来事には、戦闘機の領海への侵入や緊張した外交訪問などがありました。過去10年間で両国の世論はより固まったものになっています。

 

 

 

 

4.南シナ海領土問題

世界の船積み貨物の3分の1を占める貿易港へのアクセス、大量の石油とガスの埋蔵量を誇る南シナ海は、周辺の国々によって切望されています。南シナ海に散在する小さな群島は、排他的経済水域を主張するための重要な足場となります。ブルネイ、中国、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムはすべて海域が重複していることを海洋的に主張しています。

南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)はその中でも紛争の震源地と言えます。多くの島々が3国以上によって領有権を主張されています。豊富なエネルギー資源、豊かな漁場、軍事・戦略的に重要な位置、国際貿易輸送の航路をかけて、僅かなサンゴ礁と砂だけで出来た島が羨望の的となっているのです。

5. 生きた国境

誰もが納得する地図を作ることは容易ではありません。どの地図メーカーにとっても、政治的枠組みを地図上に反映することは、緊張を要する作業です。たとえそこに踏みにじられた国境が横たわっていたとしても、大胆に線引きをしなければいけないからです。人々を紛争や侵略によって苦しめる境界紛争がある一方で、世界にある境界の大部分は近隣の文化を尊敬し、平和を享受する平穏な場所です。境界線を定めるのが私達、生き物である限り、国境も生き物のように変化します。境界は、その地域の人と政府が戦略的優位性と利益を追求する傾向を如実に反映します。しかし、人間には他者への理解、妥協、そして友情といった素晴らしい力があります。自己利益と主権の尊重とのバランスをとることができる力が、地球に私達が引いたこの境界線をより素晴らしものにしてくれると信じたいものです。

 

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掲載種別

掲載日

  • 2016年11月18日