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惑星探査にGIS!火星探査成功への第一歩はGISと衛星画像

 

探査機の火星着陸地点決定にGISと衛星画像を駆使

最新鋭の惑星探査機がゆっくりと砂漠の惑星に着陸した。2012年8月、アメリカ航空宇宙局(NASA)とジェット推進研究所のミッションプランナー達は、火星科学研究探査機の着陸成功に喜びをあらわにした。火星科学研究探査機は、火星のダイナミックな歴史の手がかりを探究するためにデザインされたコンパクトカーサイズの惑星探査機だ。古代に衝突でできたクレーターの探索を主な目的とし、今回が火星着陸を成功させた7機目となる。探査機には最新鋭のカメラとセンサーが装備され、データの収集と地球への送信を最低でも2年間行う予定だ。

 

火星科学研究探査機のエンジニアにとって地球以外の惑星の地表面に向かって宇宙空間から探査機を誘導することは、ある種の戦いだ。地表面を移動して、多数の実験を行う探査機であるキュリオシティと円滑に通信を行うには、火星の地形を考慮する必要がある。とがった岩と巨大な石が散らばる火星では、いかなる任務も慎重に計画立案しなければ物理的な被害を受けたり、面倒な状況に陥ることは必至だ。そのため、アメリカ航空宇宙局とジェット推進研究所は、空間分析ツールを使った地形のモデリングと解析を行うため、過去の火星探査で撮影された多彩で複雑な地形を映し出したリモートセンシング画像と、ArcGIS製品の使用を決定した。

  

画像資料は、惑星、衛星、小惑星の陸地探査におけるマップ構築に極めて重要である。火星科学研究探査機の計画立案に使用された画像データセットは、火星の軌道を何年も周回し、火星表面のマルチスペクトル写真データを収集する3つのリモートセンシング人工衛星から得ている。これら3つの内、マーズ・リコネッサンス・オービターは2006年に新たに火星の周回軌道に到達した人工衛星で、最新のカメラと最も豊富な画像データセットを有する。HiRISE (High Resolution Imaging Science Experiment)と呼ばれる高解像度のカメラからは、今後の惑星探査機によるミッションにおけるマップの作成に必要なベースマップを提供している。

 

ジェット推進研究所は、HiRISEの調査から得た数百のデータセットをArcGISにインポートし分析することで、潜在的な着地地点を導き出した。まず、画像から30地点の着陸候補地が選択、検討された。着地の実現性を左右する要素の一つに、変向風がある。変向風は地形が大きく影響するので、空間分析は着陸可能地点の絞り込みに役立つ。地形以外の要因には、実験機材の温度管理に適した緯度や探査機の速度を落とすために十分な大気を得るための高度、降下中の探査機の制御と燃料管理、探査機を着陸時に安定させるためのスロープがある。これら要因を総合的に分析した結果、ゲイル クレーターが研究、着陸エリアに最も適していると判断された。探索に不可欠な安全性や調査対象地としての要件に、最も合致していたからだ。

  

火星に刻まれた運河や峡谷は、かつて膨大な量の液体が存在していたことを表している。火星科学研究探査機の主な任務は、火星の年代学、地理的経過、生命体存在の可能性をより深く理解することである。このため探査機は、探査に地理的見地からも有益だと思われる場所に着陸する必要がある。同時に、着陸時の障害を最小限に抑えられる平らな地形であることも大きな条件だ。HiRISE画像からArcGISで作成した岩石密度マップなどは、科学実験を行うための安全な着陸地点や探査経路を決定する上で、欠かすことができないのだ。

  

各着陸候補地点の分析を進めるため、HiRISEからの数値標高モデル(DEM)や岩石の存在度マップなどの数十ギガバイトにおよぶ地理空間情報の定量化と管理を行うGISプロジェクトが組織された。ArcGISを使った画像や数値標高モデル(DEM)の処理は、探査機の突入、降下、着陸の計画立案に役立った。作成されたマップは、着陸の計画立案に役立った。今回のミッション全体を通じて、GISが導き出した成果は大きな評価を受けた。

 

火星科学研究探査機の探査活動を通して、GISは戦術的、戦略的なプランニングツールとして、また新たな科学の創作と評価のための重要なデータセットとして、今後も大いに役立つであろう。

  


 

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掲載種別

掲載日

  • 2013年2月26日