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事例

安全な通行の実現に向けたWebGISでの道路維持管理業務の取組み

山口県 土木建築部 道路整備課

 

WebGISとリアルタイムな現場情報を活用し、業務効率化と的確な意思決定と現場への指示で情報共有を実現

概要

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山口県庁

山口県土木建築部道路整備課は、県が管理している道路の維持および管理や道路事業の指導、監督を担う部署である。
宮崎氏、古川氏が所属する整備班では、車両が安全に通行できるように、県道の定期的な点検・パトロールおよび緊急時の対応を行うことを日常の業務としている。舗装の異常や道路の陥没、倒木による通行障害を検知し、必要に応じて県道のメンテナンスや工事を行っている。
ここでは、道路整備課がWebGISを活用し、日々の道路維持管理業務の効率化・高度化を実現した事例について紹介する。

導入経緯

山口県と山口大学は、官学共同事業(共同研究)によりGoogle Maps APIをベースに道路の維持管理を目的としたシステムのプロトタイプを作成し、平成22年まで旧山口土木建築事務所において試験的な運用を行っていた。
平成22年からは、地元の建設コンサルタント企業である株式会社宇部建設コンサルタントがシステム改修を手掛け、道路維持管理支援システム(第1期)の本庁および出先の土木事務所での利用が開始された。

その後、Google Maps APIの課題や契約満了等に伴い、システムの機能拡張や操作性の向上を目的に、株式会社宇部建設コンサルタントが道路維持管理支援システムをArcGIS for Serverを使用して再構築し、平成26年より本稼働している。

システム概要

道路維持管理支援システムは、ArcGISfor Server上で動作するアプリケーションであり、道路整備課職員に加え、県内の8土木事務所の維持管理課職員および道路パトロールを委託している26社の調査員が使用している。
システムは、県民やパトロール中の調査員から連絡があった場合や、風水害や雪害などにより障害物の除去や除雪作業が必要となった場合等に使用される。

現場に急行した調査員が現地の状況をスマートフォンで写真撮影し、システムにメール転送することによって位置情報と写真が自動的にWebGIS上に登録される。

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道路維持管理支援システムの画面

導入効果

「道路維持管理支援システムの導入により、現場の位置の特定と情報共有を図ることができるようになった」と古川氏は語る。
これまでは、現場で撮影した写真と調査内容を紐づける作業を事務所に戻ってから行っていたため、特に山林部などにおいては位置の特定が困難であった。
システム導入により、スマートフォンから撮影した写真に位置情報を付けて登録することができるようになり、大幅な作業の効率化を図ることができた。また、WebGISによるシステム構築を行ったことで、誰もが何処からでも現場情報を閲覧できるようになった。例えば、県庁に居る職員が現地調査員に対し災害時の迂回路を指示するなど、オペレーション業務としての活用も可能だ。

今後の展望

宮崎氏と古川氏は、現行システムに更なる機能を追加し、道路整備課の日常業務の高度化および効率化を目指している。

①日報作成

道路パトロール業務は、委託業者が行う場合と県職員自らが行う場合がある。1週間で県下全路線を巡回できるように計画を立て実施している。担当者はパトロール実施後、事務所にてパトロール結果を日報として整理・入力している。
道路整備課では将来の構想として、パトロール中に現地情報を登録する際、日報情報もあわせて登録できるように拡張したいと考えている。

②パトロール車の位置情報管理

パトロール車に3G通信回線GPSトラッカーを搭載し、管理者がパトロール車をリアルタイムにモニタリングすることで、車両の運行管理を行うとともに、緊急時に各車両に現場急行の指示を出すなど、迅速な対応ができるよう機能拡張を実施している。平成27年度には試行運用し、28年度より県下全域にて運用を開始する。

パトロール車のモニタリング。パトロール車両の現在地を表示
パトロール車のモニタリング
3G通信回線GPSトラッカー
3G通信回線GPSトラッカー

③部署横断的な活用

道路整備課では、道路維持管理支援システムを単にパトロール結果の情報共有に使用するだけでなく、県が管理する道路設備(トンネル、橋梁等)などの様々な情報をシステム上に登録し、業務部署横断的な活用を検討している。特に災害発生時などにおいては、迅速な情報収集と意思決定が求められることから、道路維持管理支援システムを道路整備課の情報共有プラットフォームとして活用することを目指している。

④情報蓄積による分析

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作業の様子

道路維持管理支援システム上に登録される様々な情報を蓄積することで、過去の履歴からどの路線が倒木や落石等の被害を受けやすいかなど、可視化が可能となる。今後、道路整備課では、道路の維持管理と合わせ、道路防災の観点も踏まえて、災害対策のために活用することも検討している。

プロフィール


山口県 土木建築部 道路整備課 整備班
主査 宮崎 浩司 氏( 右)、 技師 古川 俊 氏( 左)



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資料

掲載日

  • 2016年2月12日