事例 > 都市部の屋根は「食糧・水・電力」を生み出す資源と成るか

事例

都市部の屋根は「食糧・水・電力」を生み出す資源と成るか

NPO法人 Bay Localize

 

オクラホマ州を拠点とする NPO法人Bay Localize はサンフランシスコ湾岸地帯の自治体と連携し、レジリエントな地域社会の構築を進めている。多様な知識や政策を持つ地域のリーダーと協力し、天候不順やエネルギーコストの上昇、不況といった課題に取り組む。

 

都市部の屋根は資源と成るか

Bay Localize では、レジリエントな地域社会構築の一環として、都市部の屋根や屋上(以後、まとめて屋根という)の活用を目的とした手法論の構築と評価を行うプロジェクトを立ち上げた。屋根で食糧を栽培し、雨水を集め、太陽光発電を実施した場合、どの位の資源が得られるか試算する取り組みだ。
プロジェクト手法の構築と評価は、カリフォルニア州バークレーのコンサルティング会社 PlaceWorks が請け負った。PlaceWorks は ArcGIS for Desktop を使い、屋根を資源として評価するためのインタラクティブな検索、分析、プランニングが可能なツールを構築した。ツールを使うと、屋上緑化や水耕栽培、太陽光発電、雨水取水に適した屋根を推定し、地図上に表示することができる。複数の用途に適した屋根を割り出すことも可能だ。

都市部の屋根で再生可能エネルギー:オクラホマ州イーストレーク

 

屋根の形状と最適な利用用途の選定

資源を生み出す屋根の割り出しは、航空写真を使い対象地域内にある建物や屋根を自動的に検出することから始まった。それぞれの建物の屋根の形状を平面、切妻、傾斜などに分類し、傾斜のある屋根の方位を記録した後、ArcGIS Spatial Analyst エクステンションの日射量解析ツールを使い、太陽光発電の評価が行われた。
次に、建物の用途、建築様式、屋根へのアクセス、素材、構造統合性、貯水タンク設置可能なスペースの有無などのライブラリが作成された。これらの属性は、モバイル端末を使い、訓練を受けたボランティアやスタッフによって収集された。
その後、建物の特徴・立地と太陽光発電量の相互関係を比較するためのアルゴリズムを使い作成した GISモデルを実行し、それぞれの屋根に適した利用方法ごとに分類された。分類結果を踏まえ、算出された利用方法が実施可能かどうか、建物の構造的側面を加味した検討が加えられた。

 

考慮すべき4つの要素

屋根の形状が明らかになると次に必要となるのが、屋根の活用により得られるであろう食料、水、太陽光発電量の数値化である。それぞれの屋根で生産が期待できる葉物野菜量、取水量、発電量の計算がArcGIS for Desktop Spatial Analyst エクステンションを使って行われた。
屋根の活用には、考慮すべき4つの要素がある。屋根の形状、アクセス、荷重、貯水槽のためのスペースの有無である。各要素の詳細は以下の通りである。

① 形状

勾配屋根は一般的に食糧栽培からは除外し、雨水と太陽光発電に利用する。

② アクセス

屋上緑化や水耕栽培を行うには、階段やエレベーターで屋根(屋上)に行けることが必要である。

③ 荷重

多くの屋根は、屋上緑化の荷重を支えることが出来ない。しかし、水耕栽培は、低い重み係数で、多くの屋根に設置することができる。

④ 貯水槽スペース

雨水の収集は、貯水槽を置ける十分な場所がある場合のみ実施できる。モデルでは、1,000 ガロンの貯水槽を設置できる場合にのみ、雨水の収集が可能としている。

 

屋根を活用した資源生産の可能性

PlaceWorks は構築した手法論を活用し、実際にオクラホマ州イーストレークをテスト地とした屋根の活用評価を実施した。イーストレークは、様々な種類の建物が混在し、人種や経済状態が多種多様な約 7,000 の人口を持つ。約2.5平方キロメートルに748棟の建物がある。
評価の結果、菜園による屋上緑化を実施できそうな屋根10棟、水耕栽培を行えそうな屋根 18 棟、太陽光発電に適した屋根668棟、雨水の収集が可能な屋根を備えた 623 棟を割り出した。これらの屋根を利用して生産できるであろう資源量は以下の通りである。

 

都市部の屋根で再生可能エネルギー:活用できた屋根をマッピング

 

「ArcGIS」は強力なツール

屋根における資源生産の分析に利用した ArcGIS は、データ管理、地図作成、分析に強力なツールである。ArcGIS なくして、多くの変数の間で複雑な相互関係を計算するのは事実上不可能であっただろう。Bay Localize では、このプロジェクトを基にした「町の緑化イニシアチブ」を立ち上げ、地域で持続的に食糧、水、電力量の基本的なニーズを満たすための取り組みを進めている。

 

関連業種

関連製品

掲載日

  • 2015年7月2日