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事例

地理情報の活用で太陽光発電の電力買取申請業務の大幅短縮を実現

レッヒヴェルケ株式会社

 

GISの利用で、効率的な送電ルートを割り出し配電線の負荷を最小限に

課題

導入効果

 

レッヒヴェルケ株式会社(以下、LEW)は、南ドイツにあるバイエルン州の50万顧客に電力を供給するドイツ大手のエネルギー供給企業である。LEWの主な配電エリアは、世界で最も太陽光発電が盛んな地域と重なる。そのため、毎月約900件の売電希望者から太陽光発電で生み出された電力を購入し、配電線に送り込んでいる。売電者の多くは、巨大な屋根を利用して発電する農家である。その他にも同エリアには、いくつかの太陽光発電団地が存在する。法律では、発電量30KW以上の太陽光発電所からは電線の利用料を徴収できるが、それ未満の発電所には課金できないと定められている。

 ドイツ レッヒヴェルケ社 太陽光発電

 

導入経緯

LEWは、再生可能エネルギー受入れ増加による影響を最小限に抑えるため、インフラ投資としてArcGISを導入した。GISを活用することで、利用の少ない配電線に切り替え位置を調節できるようになった。しかし、切り替え位置の調整が必要ない場合でも、新たな電力の受入れにむけた検査、計算は必要である。検査業務は、回路網計算(回路と変圧器は新たな送電に耐えられるか)、配電線への電力受け取りポイントのSAPへの登録、承認通知発送で、60名の従業員によって行われていた。
 
回路網計算には表計算ソフトを利用していた。Microsoft Excelを使えば簡単に計算できる。しかし、回路網のパラメーター(ケーブルの直径、種類、長さなど)を数式に入力する必要があり、結果としてExcelへの入力作業が多くなる。月に1~2件の新規申込み数であればこの方法でも対応できるが、供給地域の特性と申込み数の多さから、LEW GISマネージャーであるマーティン・トーマ氏は、業務フローの改善が必要であると感じていた。

 

導入手法

トーマ氏は、計算に使う全ての情報が位置情報に結び付いていることを知ると、ITコンサルタントからの助言を得ながら、回路網計算をデータベースレベルで直接行うシステムを構築した。トーマ氏が構築したのはGISを活用したWebベースの回路網情報システムで、サービスエンジニアが決められたサービス地点をクリックすると、配電線の電力受け取りポイントが表示され、新たな電力を受け入れが可能かどうかサーバーで計算するというものだ。もちろん、シミュレーションであろうが実運用であろうが、切り替え位置は考慮されている。

 

導入成果

申込み申請から実際に太陽光発電が開始されるまで時間がある。その間に、電力受け入れポイントをWebベースシステムに保存し、この部分の配電網に掛かる負荷を計算する。GISを活用したWebベースのシステムの利用で、新たな申請への技術的評価はExcel利用時の30分から数分に短縮された。毎年約1万件の申請があるので、大凡520営業日分の業務時間短縮に等しい。このソリューションの導入で顧客サービスが飛躍的に向上するとともに、 業務面では効率的な送電ルートの迅速な割り出し、切り替え位置を考慮した計算ができるようになった。
 
「すでに、6万件の太陽光発電所から送電を受け入れている」とトーマ氏は言う。「シンプルなWebベースアプリケーションとサービスを業務に利用する戦略は、LEWにとって最も効果的だった。GISデータと機能をWebベースの業務システムに盛り込むことで、業務プロセスの大幅な効率化が実現された」

 

今後の展望

LEWではGISの導入で見える化が促進し、データの質を保つ意識が高まったという。トーマ氏の次の計画は、SAPを直接このWebベースシステムに統合することだ。SAPへの申請入力(現状は紙ベースで処理)をデジタル化することで、サービス地点を選択するだけで顧客情報が閲覧できるようにする予定だ。

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掲載日

  • 2015年2月15日