日本森林技術協会は森林・林業分野のエキスパートとして豊富な知識、経験、技術と情報を持っており、それらを活かした森林・林業に関わる各種調査・研究開発等のコンサルティング業務等を国内外で実施している。
2013年、日本森林技術協会は、国際協力機構(JICA)のプロジェクトの1つでアフリカ大陸のボツワナ共和国(以下「ボツワナ国」)の国家森林モニタリングシステム強化プロジェクトに、株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバルと共同で技術提供をすることになった。同プロジェクトにArcGIS for Desktopが利用されることになり、初めに森林GISデータベース開発に係るニーズ調査に使われた。その後はGISデータの蓄積や分析に利用され、2016年のプロジェクト終了後もボツワナ国職員が継続的にモニタリングが続けられるよう、ArcGIS for Desktopのトレーニングも行われている。
ボツワナ国が国家森林モニタリングシステム強化プロジェクトを要請した背景に、森林資源等のデータを収集・利用するための体系だった技術、経験が不足しており、自国のデータが適切に蓄積されていないという課題があった。持続的な森林資源等の管理をする以前に、現状が把握できていない状態とも言い換えることができる。本プロジェクトにおける同協会の役割には、いかに持続的な森林管理ができるのか、そのためのツールを含むノウハウを提供するコンサルティング業務が含まれる。
2013年からの3年間の本プロジェクトでは、以下の4つが森林資源モニタリングの重要な柱として掲げられている。
この柱をもとに、ボツワナ国全土の森林分布図の作成、インベントリー手法の確立、そして森林GISデータベースの整備について支援をすることになった。
ヨーロッパの支援国は、プロジェクトの撤退後もメンテナンスの費用がかからないとして、無償のオープンソースGISを導入する傾向にあるが、無償のソフトはある程度の経験がないと維持をするのが難しい。その一方で、商用のGISエンジンはメンテナンス費用こそかかるものの、持続的に使用でき、オープンソースと違いサポート体制が整っている。その中でもArcGISを使用している技術者・指導者は多く、ボツワナ国が米国Esri社とELA(Enterprise License Agreement)の契約を結んでいたこともあり、ArcGIS for Desktopの導入が決まった。
森林GISデータベースと一言で言っても、今まで体系的にデータ収集を行っていなかった本プロジェクトのカウンターパートであるボツワナ国森林局(DFRR)職員には、具体的にどのようなデータを収集、そして蓄積すればいいかイメージしづらかった。そのため、まずはArcGISのデータドリブン機能を利用し開発した地図調製プロトタイプシステムを用いて、森林GISデータベースとはどういったものか、何が必要なのか、といったニーズ分析に利用した。
データドリブン機能は、格子状、及び、帯状の図郭を作成することで、地図レイアウトのシリーズの作成を素早く行えるArcGISの機能だが、ボツワナ国全土において、1次メッシュ(約縦80km × 横80km)の格子状図郭を作成し、それをもとに各範囲内における森林資源分布の把握に活用できるよう設計した。ニーズ分析において利用され、プロトタイプ森林GISデータベースに含まれる内容としては、以下が含まれる。
ArcGISでは背景画像として、そして画像解析ソフトウェアを利用して、森林面積の経年変化を求めるために利用される。
3年に亘るプロジェクトで、1年目を終えたところだが、ArcGISを利用した森林GISデータベースのプロトタイプを開発、提示することにより、森林GISデータベースとして、どのようなデータを蓄積すれば良いのか、どのようにデータを管理すれば良いのか、ボツワナ国職員に具体的なイメージを共有してもらうことができた。
ボツワナ国職員の本プロジェクトに対する積極的な姿勢も一因ではあるが、1を聞いて10を知るという言葉があるとおり、研修における技術取得がとてもスムーズである。本プロジェクトが満期に達してコンサルタントが撤退しても、ボツワナ国の職員が自分達で引き続きデータを蓄積し、いずれはREDD+(レッドプラス)やFRA(世界森林資源評価)などに報告ができるようになることも視野に入れ、分かりやすいマニュアルを整備し持続的に森林GISデータベースが運用できるよう協力を行っていく予定だ。