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事例

住民基本台帳データの更新を毎日GISに反映。庁内の様々な業務に活用

会津若松市

 

バス路線の見直しや、高齢者と民生児童委員の担当エリアのマッチング、空家の分析やオープンデータの活用による消火栓位置アプリの作成など

課題

会津若松市役所
会津若松市役所

導入効果

 

概要

会津若松市は平成25年に統合GISを導入した。特徴的なのは、日々の住民基本台帳の更新が反映されており、統合GISには、常に最新の住民データが位置情報とともに搭載されていることだ。最新の住民情報が反映されたGISデータはさまざまな原課で利用され施策決定の基礎資料となるほか、GIS上で管理する消火栓の位置情報を一般に公開するといったオープンデータとしての活用もされている。統合GISのさらなる利用促進のため、庁内横断的な「統合GIS活用検討チーム」を立ち上げ、毎月、勉強会が開催されている。

 

導入経緯

会津若松市は福島県の西部に位置し、磐梯山や猪苗代湖など豊かな自然に囲まれたまちである。江戸時代には会津藩の城下町として栄え、白虎隊や大河ドラマ「八重の桜」など、歴史上の事物で観光産業が盛んである。また、日本初のコンピュータ専門大学として優秀な人材を輩出する「会津大学」を擁し、市役所においても様々な先進的取り組みを進めているなど、会津若松市はITに関して先進的な自治体という一面も併せ持っている。

市民課に勤務する伊藤氏は、新潟県柏崎市の活用事例(事例集Vol.7掲載)から、業務革新の手段としてかねてよりGISに着目していた。そして、平成24年の総務省補助事業「ICT地域のきずな再生・強化事業」において構築したシステムの一部としてArcGISが導入されたことから、この活用を精力的に進めてきた。防災安全課(現在は危機管理課)が主体となって実施した同事業では、震災によって故郷を離れた大熊町民のきずな作りを支援することを目的として、SNSをはじめとした各種システムが導入された。

システム概要図
システム概要図

この一部として導入されたGISについては、その汎用性・有用性から、災害発生時において被害状況を視覚的に把握可能とすることや、身体障害者・高齢者などの災害時要支援者への支援ツールとしても活用できるなどの効果が見込まれていた。また災害時に使うツールは、職員が平時からその操作に精通していなければならない。通常業務において日々利用できるGISは、防災業務に留まらず、あらゆる場面において市の行政事務を革新するため、まさにうってつけだったのである。

 

解析手法

会津若松市のシステムにおいて最も特徴的な点は、GISデータが住民基本台帳データと連動し、毎日最新の位置情報へとアップデートされている点である。住民が異動届を提出した際、窓口で紙地図を示し場所の聞き取りを行う。その情報は、内容の確認後毎日夕方、世帯番号をキーに、職員自らの手で、GISの住民基本台帳レイヤデータとして更新されている。その住民基本台帳レイヤは、各原課で運用しているシステムと紐付が可能であるため、各原課は常に最新の住民位置情報を利用して、独自のレイヤをGIS上に作成、分析することが可能となっている。これは全国の自治体でも他に類を見ない。

窓口で異動場所について聞き取り
窓口で異動場所について聞き取り

毎夕方、住基データの更新をGISへ反映
毎夕方、住基データの更新をGISへ反映

 

導入効果

統合GIS導入後、さまざまな原課でGISは利用されている。例えば、住基カードによるコンビニでの各種書類発行に伴う、コンビニの位置の案内資料の作成(市民課)や、民生児童委員と町内会のエリア図を重ね合わせた差異の抽出(地域福祉課)、民生児童委員の担当エリアごとの高齢者世帯リストの作成(高齢福祉課)、人口分布と公共施設の設置状況の確認(企画調整課)などがある。地域づくり課ではGISにより交通空白地帯を分析し、バス路線の見直し・再編を行っている。

危機管理課では、以前から各消防団から消火栓の位置図の提供の要望があった。積雪に埋もれた消火栓を発見するためである。しかしコストや作業量の問題から提供ができていなかった。そこでGISで消防水利の位置情報をデータ化し、そのデータを市が運営するオープンデータ活用プラットフォームData for Citizenで公開した。そしてそのオープンデータを活用して、市内IT関係者で構成するボランティア団体Code for AIZUが「会津若松市消火栓マップアプリ」を作成したのである。また、住民のポイントと建物データを重ね合わせ、住民のポイントが無い建物を抽出することにより、空家対策のための基礎データの作成も試験的に行っている。

勉強会の様子
勉強会の様子

ところが、GISの庁内での活用が進んでいく一方で、データの作成や分析作業が伊藤氏の元に集中するようになってしまった。汎用GISでありながら限られた人しか操作できないのでは意味が無い。そこで各原課をまたいだ横断的な「統合GIS活用検討チーム」が立ち上げられ、庁内職員向けにGIS活用セミナーを実施する等、利用促進を図っている。現在チームには市民課、税務課、危機管理課、地域福祉課、廃棄物対策課、情報政策課から職員が参加しており、月に1-2回のペースで勉強会が行われている。

 

まとめ

勉強会では各課からさまざまなアイデアが出され、それを全員でレビューし、改善していく。1時間程度の勉強会の間に驚くほどたくさんのアイデアが出され、実際それらのアイデアが実現しているのである。ある原課が整備したデータを他の原課のデータと組み合わせることにより、また別の問題を解決できることがこの勉強会内で次々と発見されていく。これは最新の住基データがGISを介し各原課のデータとリンクしていることで可能になるのだが、加えて、メンバーのモチベーションの高さによるものである。自分の思っていたこと、課題や疑問がGISを介することにより解決されていくことを楽しんでいるように見える。「自分たちで手を動かしてデータ修正することでアイデアが出るし、災害時など、いざという時にデータ作成ができるようになるのです」と伊藤氏は語る。将来的には全庁へのサイトライセンスの導入を目指しており、現在、他の自治体ともGISの促進に向けて連携を図っている。「庁内で、誰もが普通にGISを利用し、普通に問題を解決していく。そんな形を目指したい」と伊藤氏は語った。

 

プロフィール


左から
情報政策課 主 事 星 美穂 氏
地域福祉課 副主幹 仙波 紀子 氏
税 務 課 主 査 星 圭一郎 氏
市 民 課 主 査 伊藤 文徳 氏



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資料

掲載日

  • 2015年8月4日