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海洋水質管理業務のワークフローを効率化

アブダビ環境局

 

著しい経済成長から希少海洋生物を保護するため、水質モニタリング情報を公開し、住民の環境意識向上を目指す
 
課題

成果


アラブ首長国連邦と湾岸地域で最大のサンゴ礁であるRas Ghanada
アラブ首長国連邦と湾岸地域で最大のサンゴ礁であるRas Ghanadaは、ウミガメ、ジュゴン、ウミヘビ、カクレクマノミの生息地

Abu Dhabiはアラビア語でシカの父という意味だが、アブダビはシカだけが有名なわけではない。アブダビはアラブ首長国連邦の首都であり、膨大な種類の生物の生息地でもある。その自然豊かな海は、絶滅危惧種のアオウミガメやタイマイ、そして地球規模で絶滅の恐れのある4種類のサメと3種類のエイの生息地である。加えて、人魚伝説のモデルといわれているジュゴンの世界で3番目に大きな生息地でもある。このようなアブダビの特有な自然環境は様々な方面から高い注目を集めている。

アブダビの海とそこに生息する生物を保護

アブダビの海を生息地としている生物と生息地の保護のために、1996年にEAD(Environment Agency Abu Dhabi)という政府機関が設立された。EADの主な役目は自然環境とその維持能力の保護、そしてアブダビ経済の未来と自然保護は共にあるという認識を確立させることに設定された。これらの目的を達成するために、正確な情報を必要な時に取得できるということが重要だったのである。

空前の経済成長とそれに伴う人々の生活の変化がアブダビの沿岸部の環境に悪影響を与えることは明らかだった。この危機的状況を救うために、総合的に長い期間で沿岸の水質をモニタリングできるプログラムを必要とした。このプログラムの下、公共のビーチ、港、工業地帯、処分用地、下水の放出口、脱塩プラント、浚渫された(底面を浚(さら)って土砂などを取り去ること)河川近辺の水質をモニタリングした。そして、EADの既存の環境ポータルフラットフォームを使って、サンプル情報を管理、分析そして地図やチャートなどの形で出力できる海洋水質アプリケーションを開発することにした。このような背景から、EADはこれらのデータを管理して、責任者、専門家、研究機関、そして住民たちと情報を共有する必要があった。加えてこのアプリケーションは、紙ベースのサンプル管理から電子的ワークフローに移行する役目も担っていた。

このような要望に応えるべく、Esri Northeast AfricaがEsriジオポータルサーバーと既存の環境ポータルを組み合わせた海洋水質システムを提案した。環境ポータルは様々な方面の環境に関する140以上のデータレイヤーを保有するEADの環境データベースにリンクしていた。海洋水質システムはArcGISプラットフォーム上に作られ、アブダビの様々なエリアの水質を表す複数のマップレイヤーで情報を提供するために、様々なデータ解析ツールが活用された。このシステムはサンプルのデータ分析、そしてさらに情報の公開を含むすべてのワークフローを管理することができた。

海の水質情報の普及

ArcGISの分類機能を使うことにより、シンボルを使って水質の値を可視化し、安全な値を上回ったパラメーターを科学者が簡単に見分けることができるようになった。一方、マップ上でMWQI(Marin Water Quality Index)に基づいた水質の値を色分けして表すことにより、住民は公共のビーチが安全か危険か簡単に識別できるようになった。MWQIは国際的な基準と事実に基づいたシステムによって、自動的に計算される値である。海洋水質システムのツールはアブダビの複雑な海洋環境情報をマップ上に表示にすることを可能したのである。

EADの環境情報管理部門のアニル・クマール氏は「このように水質の情報を簡単に理解できるように提供することで、ビーチを訪れる人々に自分が訪れるビーチの安全性に興味を与えるだけではなく、住民と環境を結びつけてくれるであろう」と言っている。

インタラクティブなマップは、アブダビのアラビア海に
インタラクティブなマップは、アブダビのアラビア海に
設けた各水質測定地の海洋水質インデックスを表す


政策担当者はチャート、地図、数値やサマリーなどを含むレポートを通して、容易に海の状況を理解することができる。同時に、水質の状況、年別サマリー、項目ごとの傾向、サンプル情報の詳細、異常値のパラメーターの最新の情報にも即時にアクセスできる。

「サンプルからの水質の値とレポート作成へのワークフローを直接紐づけることによって、正確で素早い水質管理を可能にし、EADの長い期間での水質モニタリングプログラムを可能にした」とクマール氏は述べた。

過去からのパラメーター値の変化は、直観的に判断でき、マルチレベルでのカスタマイズを可能としたチャートを通して可視化した。ビーチを訪れる人々が過去の年、月、さらには週ごとの海の水質に興味を持つだけでなく、専門家が様々な場所の様々な種類のパラメーターを見直したり、比べたり、細かな調査のために週別や月別の平均値を見ることもできる。海洋水質システムはサンプルコレクションから直接必要な海洋水質サンプルをとりだし、分析し、効果的な方法でその情報を公表するまでのワークフローを管理することでEADの業務を支援した。さらに、このシステムは十分な情報に基づいた判断と海洋の水質に関する問題の認識を高めることにつながった。

サンプル情報公開までのワークフローの自動化

海洋水質システムのワークフローの自動化は、認定された研究室から環境ポータルデータベースへサンプル結果を直接アップデートすることで可能になった。このシステムによりデータ入力者と管理者の業務が大幅に軽減された。さらに、専門知識のある関係者と情報を共有することにより、サンプル結果をただ受け入れるだけではなく、異常な値に対してサンプルを取り直したり、テストしなおしたりできる柔軟性のあるワークフローが可能になった。これは、管理者が正確な判断をすることにつながった。

情報管理チームはサンプル結果を公開する対象者(EAD内向け、もしくはオンラインによる一般向け)とサンプルエリア(特定もしくは全ての調査地点)によって公開の方法をコントロールすることができた。

クマール氏は「このサンプルワークフローにより、とくに見直し作業の部分が大幅に軽減され、職員は他のもっと重要な仕事に集中できるようになった。」と述べた。

海洋水質の分析

技術者は、サンプル結果によって地図上で変化する色と、自動的な警告によって基準値外のサンプルを認識することができた。

「基準値外のサンプルを可視化し提示することは、汚染された地点に注目を集めることだけではなく、他の環境に関するマップレイヤーを操作することで、ユーザーが周りの環境と危険性について結びつけることが可能になった」とクマール氏は続けた。加えて、マネージャーは統計分析画面で、業務や役割、または部署、エリア、調査地点ごとに、変化し続けるサンプルのレポートで問題のある業務を識別することができる。

最後に「このような情報公開の管理ツールの統合は 非効率な業務を改善する意識を高めることで、全体的にも海洋水質プログラムへ大きく貢献した」とクマール氏は述べた。

 

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掲載日

  • 2014年7月22日