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事例

経済学部におけるGISカリキュラムの確立と全学展開への挑戦

青山学院大学 経済学部

 

GISを学部のアピールポイントとしてとらえ、ArcGISサイトライセンスを導入

課題

導入効果

 

 

イントロダクション

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授業風景:電子黒板を導入し、
グループワークができるようにリニューアルした教室

青山学院大学経済学部は他大学との差別化を図り学生の質と量を確保するために、10年以上前からGISを柱の1つとして取り入れていくことを決め、学部生に対するカリキュラムを基礎から応用まで確立している数少ない大学である。機能の豊富さと日本語による文献の多さからArcGISの導入を決め、教科書として書籍を刊行、2009年にはサイトライセンスを導入した。現在では2年生から必修科目となり、3年生後半には学生各自で卒論のテーマを決める。サイトライセンスを導入したことで、どの教室のPCでもArcGISが利用できるようになっただけでなく、学生個人のPCでも利用できるようになるなど、利用環境が整ってきている。就職活動においてもITスキルプラスαの部分でGISがアピールポイントになるなど、効果が表れ始めている。今後の課題は、1年生から全学的に利用できるようにすることと、空間的な視点を持った経済学士を育てて社会に輩出することである。

 

導入経緯・背景

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書籍「事例で学ぶGISと地域分析-ArcGIS を用いて」

大学全入時代を迎え各大学では、いかに学生の質・量を確保していくかが課題となっている。青山学院大学経済学部では10年以上前から、他大学との差別化を図り、どのように新規性を打ち出していくかの検討を始めた。教員に地理関係者が多かったこともあり、これからの経済学部として従来の内容に加えて時代に即したアピールポイントとして、空間情報を取り扱いGISを柱の1つとして取り入れていくことにした。

 

 

導入手法

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卒論例:世田谷区における1保育園あたりの0~4歳人口

実際に学部生への授業を始めたのは2003年前期からで、GIS入門としてカリキュラムを作成し、専用の教室も用意した。最初は手探りの状況で操作のトラブル時の対処など苦労も多かったという。三條教授はArcView3から使い始め、授業用として導入したのはArcView8(現ArcGIS for Desktop Basic)だった。ArcView導入の決め手となったのは機能の豊富さに加えて、教育的観点から日本語で書かれた文献(マニュアル・書籍含む)の充実度であった。2004年後期からは高橋教授も加わり、教科書として書籍「事例で学ぶGISと地域分析―ArcGISを用いて」(前頁中段)を2005年に刊行した。その後、相模原キャンパスでもArcGISを使用することになり、2009年にサイトライセンスの導入を決めた。

 

 

導入効果

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卒論例:地震発生時の応急対策における環境評価

現在、大学2年生から必修で基礎及び操作実習を学ぶことができるようになっている。特に現代経済デザイン学科では、GISをより専門的に学ぶことができる。学年後半はチームに分かれてテーマを決め、データ収集から各自で行うなど、かなり実践的な内容となっている。テーマの例としては、郵便局や民間金融機関の立地分析がある。3年生の後半になると、卒論のテーマを決めることになる。卒論テーマとしては、バイオマス発電、少子化と保育園、首都圏直下型地震の被害予測、路面電車やLRTの動線配置など多岐にわたっている。大学院においても経済学研究科「公共・地域マネジメント専攻」ではGISが必修科目であり、この授業は大学4年生でも受けることができるようになっている。学年が上がるごとに、GISの必要性を多く感じるというのが学生の感想だ。サイトライセンスを導入したことで、どの教室のパソコンでもGISが利用できるのはもちろん、さらに学生個人のPCでも利用できるようにライセンスの貸出も行っている。オープンキャンパス時にGISを紹介したことで、高校からGISを知りそのまま経済学部に入学した学生も出てくるなど、効果が表れ始めている。学生には日ごろから、ITスキルプラスαの部分でGISは就職活動の強みになると伝えており、就職活動において、経済学部でGISを学んだことは面接時のアピールポイントになっているとのことである。企業はどこでもGISは使ってみたいと思っていても人材が不足している実情があるが、ここで学んだ学生が官公庁に入り、GISを活用する部署に配属された例も出てきているとのことだ。

 

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卒論例:大分県の森林

まとめ

今後の課題としては、全学への展開と人材の社会への輩出である。全学への展開に関しては、あらゆる学部でGISが利用できるポテンシャルがあるはずであり、1年生から全学的に使えるように、学生用PCにはあらかじめArcGISがインストール済みの環境を構築したいとのこと。これを実現するために教員数をいかに確保するかが今後の課題である。「通常の経済学部の学生では学べない空間の視点をもった経済学士を育てたい。また、経済学部だけではなく、本学の全ての学生にGISに触れてもらいたい。読み書き・そろばん・GISだ」と三條教授は今後の意気込みを語った。

プロフィール


青山学院大学 経済学部
三條 和博 教授(左)
高橋 朋一 教授(右)



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資料

掲載日

  • 2014年10月14日