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事例

誰でも自由に、簡単に海洋情報を閲覧・利用できるシステム

海上保安庁 海洋情報部 海洋情報課

 

100項目を超える海洋情報、多彩な背景地図、統計情報等を網羅した総合ポータルサイト「海洋台帳」の構築

課題

導入効果

イントロダクション

海上保安庁海洋情報部は、航海の安全、海洋権益の保全、防災・環境保全などの海洋における必要な情報の収集・管理・提供を幅広く担っている。政府の海洋情報管理機関として約140年の歴史を持つ海洋情報部では、歴史ある海図に代表されるとおり、様々な業務において地理空間情報を最大限に活用してきた。

2013年には、海洋情報業務及びこれに関連する情報の一体的かつ効果的な提供を専門的に行うことを目的に、海洋情報部海洋情報課海洋空間情報室が新たに発足した。海洋空間情報室では、近年のGIS利用環境の普及に伴い、海洋情報の収集・整理・保管及び提供に関しても、高度なシステムの運用及び大規模な情報を管理するノウハウが必要不可欠となった。そのためArcGIS for Serverを基盤としインターネット上で海洋情報を誰でも自由に閲覧・利用できる「海洋台帳」を整備した。「海洋台帳」は海洋に関する総合ポータルサイトとして毎月平均30万件以上のアクセスを獲得するなど注目を集めている。

導入経緯

海洋空間情報室の発足前から、海洋情報部では海洋における地理空間情報の提供には力を入れており、2003年からは沿岸海域環境保全情報を集めた「CeisNet(シーズネット)」と呼ばれるWebGISの運用を開始している。

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CeisNet(シーズネット)スマートフォン専用サイト

「CeisNet」は油防除資機材の保管位置や、流出油により影響を受ける自然環境等の情報を平時より提供しており、大規模な油流出事故等が発生した際には、油防除措置を迅速かつ的確に実施できるよう支援する。2012年からは現場での作業や調査に活用できるように、スマートフォン向け専用サイトも公開するなど積極的に先進技術を取り込んできた。このような経験と実績を踏まえ、2012年5月からは、より多様な海洋情報の提供を目的として海洋台帳(当時名称:海洋政策支援情報ツール)」を公開した。

 

システム構成

「海洋台帳」は、誰もが簡単に海洋情報をインターネットで利用できるサイトを目指して構築された。また、現在でも、利用者や関係者からの意見を参考に継続的な改良を行い、2014年3月からは、プラグインが一切不要なJavaScriptベースのWebアプリケーションに切り替わる予定だ。

 海洋台帳には国・地方公共団体・民間・NPO法人提供の約100項目の多様な情報をカテゴリ別に整理している。中には長年にわたり蓄積してきた水温・塩分、海流といった統計データも含まれている。特定のデータは膨大で、特に33層もある基準層で計測されたデータを、どのようにまとめ表示させるかは課題であった。海洋台帳では緯度経度15分及び1度の2通りのメッシュ統計データとしてデータベース化し、水温・塩分濃度別に色分けを行い画像化した。各データは月毎の時間軸を持っているので、アニメーションによる表示も可能だ。

また、情報を閲覧するだけでなく、利用者が自由にメモをWebGIS上に描き、それらを印刷することはもちろん、利用者同士で情報を共有できる機能までも搭載するなど、高い利便性はこのシステムの特徴となっている。

「海洋台帳」はArcGIS for Server を基盤とすることで、大容量のGISデータを一元的に管理・配信することができる。汎用的なGIS製品であるため、機能拡張やデザインの変更などは、職員自らが実施することも多い。

導入効果

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海洋台帳

海洋に関する情報が一元的に確認できるため、利用者層は幅広く、洋上風力発電を計画する行政職員や民間事業者、水産事業者、教育・研究従事者など多様である。以前は情報を集約することだけでも労力を要していた多様な海洋情報が、直感的な操作で、背景地図(白地図、公共地図、深海・近海海底地形図、領海線付海底地形図)と、分類された情報項目を選択するだけで、簡単に情報の重畳と関連性を確認することができる。風速の強い沿岸域はどこで、その海域の季節毎における船舶交通量や海流はどうなっているか?確認すべき漁業権や環境保全情報はあるか?「海洋台帳」を利用するだけで、これらの問いの解答を導くことができる。

まとめ

サイトの公開直後から、「海洋台帳」は海洋に関する総合ポータルサイトとしてメディアを含む各機関からの照会が相次いだ。またサイトのアクセス数も毎月平均30万件以上あり継続的に活用されている。今後とも、再生エネルギーを含む海洋開発・水産資源の管理・教育・新規ビジネスといった幅広い分野で「海洋台帳」が大いに利用されるだろう。そのためにも、海洋空間情報室では利用者の意見を積極的に反映し、引き続き、海洋情報の一元化に向けた取り組みを実現していく予定だ。今後も海洋立国である日本に相応しい、利用価値の高い情報サービスの提供が期待される。

 

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日本各地の湾岸写真、海岸写真(CeisNetから)

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資料

掲載日

  • 2014年2月19日