道路台帳および関連資料をデジタル化することで、道路管理部署だけではなく全庁的な GIS 活用を目指す
兵庫県の中南部、東播磨のほぼ中心に位置し、県下最大の加古川の下流域にある小野市は、豊かな自然と瀬戸内式の穏やかな気候に恵まれた都市である。一年を通じて四季折々の花々が咲き、中でも夏に大輪の花を咲かせる「ひまわり」は市花となっている。産業では、古くからそろばんと家庭用刃物の生産地として有名であり、市役所の駐車場では大きなそろばんが来庁者を出迎えてくれる。
小野市では平成 23 年度、道路台帳管理システムを導入した。道路台帳の整備および管理については「道路法第 28 条」に規定されており、小野市においても昭和 60 年から紙ベースの道路台帳は整備済みであった。ただ、CALS/EC による電子納品または電子媒体によるデータ交換が必要となるなか、紙ベースの道路台帳では効率的な業務利用ができないため、小野市では本システムの導入にあたり、道路台帳および関連資料のデジタ ル化を行うこととした。
本システムの導入に際しては、道路台帳をデジタル化する予算の工面や経年変化未更新部分のデータ更新などいくつかの課題があったが、なんとか平成 23 年度内にシステムの整備にこぎつけることができ、平成 24 年度から正式に運用を開始している。
道路台帳管理システムは、クリックワンス 方式による庁内 LAN 環境での運用形態をとり、新規に導入したサーバ上にアプリケーションおよびデータを配置し、既存の職員用端末には RemoteAPP によるアプリケーションを配置した。
本システムは、約 30 台の職員用端末で利用することができる(同時利用ライセンス数は 2 ライセンス)。また、来庁者向けに窓口対応端末を設置し、道路台帳や認定網図の閲覧を行うこととした。本システムおよび窓口閲覧システムは、市役所の開庁日(土日・祝祭日、年末年始を除いた日)8 時 45 分から 17 時 15 分までの運用を前提として構築された。
本システムは、運用性、経済性等の高いシステムとするため、以下のコンセプトに 従い設計・開発された。
「道路台帳管理システムを導入したことにより、大きく業務の効率化が図られることとなった。」と奥田氏は語る。作業面においては、市全域の道路台帳を数値化したことにより、台帳の参照、検索、出力などの作業時間を大幅に短縮することができた。また、部署内で日常的に利用されている CAD ソフトと本システムとのデータのやり取りが、図郭(ファイル単位)を意識することなく、自由な範囲で入出力できるようになったことも業務の効率化につながっている。
管理面においては、台帳調書連携により、情報が一元的に管理されるようになったため、各職員の情報共有の高度化が実現できた。 住民サービスの向上という観点からは、窓口専用端末をカウンターに設置したことにより、来庁者に対するサービスの向上が図られた。
一方、今後の課題としては、本システムを利用する職員が今後増えることが想定されており、同時利用ライセンス数を増やすことを検討している。また、道路台帳に関連する情報の電子化もまだ不十分であることから、今後はより多くのコンテンツをシステム上に載せていきたいと考えている
「デジタル化された道路台帳は全庁的に利用価値がある」と奥田氏は話す。測量精度の高い道路台帳を各業務の骨格データとして利用することは、特に上下水道などの施設管理を行う部署に有効だと提言する。現在、上下水道を担当する部署では 1/2,500 DM 地形図を背景図として使用しているが、今後、道路台帳を使用することで、より詳細な地形情報を活用し、業務の効率化に役立てたいと考えている。また、地籍図など共用空間データとして利用できる既存資産を搭載することで、道路事業の推進や道路内の土地の権原の把握などへの活用方法を検討している。
小野市では、将来、来庁者が道路台帳を自由に印刷できる端末の設置を検討している。印刷用端末からの印刷は、現状有償サービスを予定しているが、サービスが実現できれば来庁者へのサービス向上と窓口業務の負担軽減が見込まれる。
現在導入されている道路台帳管理システムは、主として「道路台帳」、「認定網図」、「道路施設」の3種を管理している。奥田氏は、「今後は、維持管理が重要であり、照明灯などの道路付属物や橋梁の補修履歴情報もシステム上で一元的に管理したい」と話す。小野市では、道路付属物や橋梁の長寿命化対策に力を入れており、効率的な補修計画の元、補修の実施や予算化などのメンテナンスサイ クルに活用できる機能を道路台帳管理システム上に搭載したいと考えている。
また、河川の情報も GIS 化し、適切な河川管理と防災対策の充実を図りたいと考えている。奥田氏は最後に、「市民に道路を安全に通行いただくことが我々の使命だ。そのために GIS を活用し、適正な道路管理手法の確立をこれからも進めていきたい」と語った。