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掲載日:2008年4月4日

米国ニューヨーク州バッファロー市で突然の嵐から生まれた街路樹管理システム
〜WebベースのGISが「樹木の町」の復興に貢献〜

市が管理する樹木は雪嵐で大きな被害を受けました。倒れた樹木により寸断された道路が多数ありました。

2006年10月13日、湖水効果による歴史的な雪嵐がニューヨーク州バッファロー市を襲い、一晩に60センチ以上の積雪をもたらしました。2日後、ブッシュ大統領はバッファロー市および周辺地域を災害地区と認定し、連邦政府による復興に向けた支援が開始されました。

五大湖の1つであるエリー湖の北東に位置するバッファロー市は、毎年2.3メートル程の積雪がある地域です。例年、11月下旬から12月に雪が降り始めますが、今回記録した雪嵐は珍しく10月初旬に発生したものでした。この雪嵐の影響で、バッファロー周辺地域一帯の街路樹の85%が被害を受けました。枝が大きく張り出した樹木に垂直に雪が降り積り枝が折れたことが主な原因です。折れた枝は、車両、家屋、電線に大きな被害をもたらし、10万世帯以上約40万人に停電の中での生活を数日間強いる結果となりました。

「樹木の町」として知られるバッファロー市は、2001年から樹木の調査を行っています。市が管理する街路樹および歩道、公園にあるすべての樹木が含まれ、68,000本の樹木と108,000箇所が調査対象となっています。

雪嵐で倒えた樹木や折れた枝を撤去した後、市は街路樹など樹木の状態の調査を開始しました。調査を開始して2、3日の間に、市が管理する樹木すべてを調査、記録するには新たなシステムの導入が急務であることが浮き彫りになりました。当時使用していた樹木調査記録管理システムでは、大がかりな調査を行った場合の結果更新作業に対応できなかったからです。嵐以前は、樹木の調査記録管理業務は紙をベースにしたシステムでした。現場で樹木の情報を紙に記録し、収集したデータを主要データベースに数時間かけて入力するフローがとられていました。また、新たなシステムを導入するもう一つの理由として、今後数か月に及ぶ復旧作業を見越し、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)から最大限の援助を引きだしたいという思惑もありました。

■都市林専門家とGIS専門家
ニューヨーク市アムハースト市に本社を置くWendel Duchscherer Architects & Engineers社は、2005年から市が所有する樹木の調査記録の維持管理に携わっています。年に一度の枝落しや植林または除去、街路樹に関する市民からの苦情への対応、委託業者の検査業務、街路樹1本1本の情報更新などの業務を行っています。

WebベースGISを利用した樹木管理システムでは、樹木の状況の記録や市民から寄せられた苦情の処理を簡単に行うことができます。

Wendel Duchscherer社は、市の差し迫ったすべてのニーズに包括的に応えるべく、社内の都市林専門家とGIS専門家を動員してGISベースの樹木管理プログラムを開発しました。プログラムはUrban ForesTREE Managementと名づけられ、ArcGIS ServerArcIMSを連携させ開発が進められました。雪嵐から2週間後に初期の開発が始まった時、委託業者、検査員、市職員、都市林管理者の4グループをプログラムの初期ユーザとし、各グループの業務が持つニーズと必要条件に合致するカスタマイズ型WebベースGISサイトが構築されました。各サイトは同じ主要データベースを使用しているので、あるグループで完了した業務がデータベースに反映されることで、他のグループが必要とする情報も直ちに更新されました。これにより、情報の欠如や意思決定者とのコミュニケーションの遅れによるエラーを未然に防ぐことが可能となりました。

屋外での更新が可能なASP Web入力画面

復旧作業後の最初の業務は、市が所有する68,000本の樹木の内、被害を受けた樹木すべての記録をとることでした。屋外作業の現場でデータ入力ができるよう、ポケットPCで動作するArcIMSアプリケーションがWendel Duchschererにより開発されました。開発初期段階での懸案事項の一つに、紙ベースのシステムの廃止がありました。紙ベースのシステムは、編集可能なActive Server Page(ASP)に作り替えられ、ArcIMSサイトに統合されました。その結果、屋外調査員の支援だけでなく、主要データベースへのデータ入力業務の削減につながりました。また、区画、航空写真、道路といった一般参照レイヤーがアプリケーションに追加され、検査係員は屋外からでも所在地の参照が可能になりました。このアプリケーションから検査係員がマップ上で樹木を選択し、更新した情報を主要データベースに直接入力できるようになりました。嵐後は、一度に最大10名の検査係員が調査に出向くこともありました。このシステムのもう一つの利点は、作業完了状況をリアルタイムで表示できることです。意思決定の権限を有する担当者と市職員は、日々の進捗と詳細な情報のすべてを閲覧することができるようになったのです。

被害を受けた樹木の査定が終わると、手入れまたは伐採の契約に移ります。新たに別のArcIMSアプリケーションが開発され、各契約における造園業者の人員配置や、樹木の位置付けが行われました。市全体で一度に100名以上の作業員が作業を行うため、個々の造園業者情報の組織化は重要でした。各業者は、ArcIMSサイトからマップと各業者が契約した樹木リストを取得できます。業務が完了すると、Webサイトから作業確認の依頼を行います。作業確認はWebアプリケーションから簡単に依頼することができ、屋外にいる検査係員が業務の完了した場所を訪れ検査することが可能になりました。これにより、検査係員のスケジュール調整と業務が自動化され、確認作業および業者への支払い業務の迅速な処理につながりました。

バッファロー市における都市林管理の最も複雑な業務は、住民から寄せられる苦情の処理と樹木の所在地および属性の編集です。Wendel Duchscherer社は、これらの課題解決に見合うように設計されたArcGIS Webマッピングアプリケーション(WMA)を構築しました。都市林管理者が樹木の所在地および関連する属性の編集を行う際、樹木情報ツールを使用してマッピングインターフェースから樹木を選択し、各樹木の表示と編集を行えるようになりました。また、屋外から手入れや伐採の契約の追加が可能になり、後で契約資料を作成する必要がなくなりました。

市のWebサイトには、行政サービスに関する市民の苦情を受け付けるコールセンターが設置されています。樹木に関する苦情はすべて、樹木の所在地を地理座標に入力することでシステムに登録され、登録された位置情報は毎晩自動でWebマッピングアプリケーションサイトに集約されます。都市林管理者が個々の苦情を選択し、苦情に対応する様々な属性レコードを入力することができるカスタマイズツールも開発されました。

10月の雪嵐は、かつてない被害をバッファロー市の樹木にもらたし、同時に都市林管理の在り方を変えました。GISベースのUrban ForesTREE Managemenプログラムは、効果的かつ効率的に都市林の管理と維持を行うシステムとして市に貢献するとともに、市は経費削減で生まれた予算を樹木の植替えに充てられるようになりました。

 

関連リンク

ArcNews Online: Buffalo, New York, Urban Tree Management Evolves from Surprise Storm

 
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