Google
トップページ 製品情報 サポート お問合せ&ご購入 GIS適用分野&事例 GISコミュニティ 会社概要
掲載日:2007年8月17日

エールス棚氷の崩壊をマッピング 〜GISが北極圏の84平方キロメートルの氷島を追跡〜

エールス氷島(赤線のポリゴン)が、青で縁取られたエルズミア島から2005年8月13日に崩れました。RADARASETの背面画像はアラスカ大学地球物理研究所により処理されました。

2007年1月初旬、北極の棚氷崩壊のニュースが世界中を駆け抜けました。BBC、CBC、CNN、ニューヨークタイムズなど各国の報道機関がカナダ エルズミア島フィヨルド沿岸のエールス棚氷の崩壊と北極海への漂流を報じたのです。

棚氷の崩落は、2005年にカナダ氷層局のローリー・ウィアー氏が衛星画像の比較をしている時に発見しました。ウィアー氏はオタワ大学雪氷圏研究所のルーク・コップランド氏にこの事実を報告し、コップランド氏はエールス棚氷で起きている現状について科学的な調査を開始しました。棚氷崩壊の事実は専門家の間では有名でした。しかし、メディア関係者がこの事実を確認し報道したのは15カ月も経てからのことでした。

地球温暖化が原因であるとの予測から、エルズミア島から16キロ地点に浮かぶこの氷島に人々の関心は集中しました。「現在のところ沖合で凍結しています」とアラスカ大学地球物理研究所のデレック・ミューラー博士研究員は述べています。博士は調査を支援するとともに、84平方キロメートル(港区4つ分)のエールス棚氷に起きた事実について論文にまとめています。

氷島は2005年8月13日の崩壊以来さほど移動していないため、今のところ船舶や油田採掘装置への影響はありません。しかし、今後問題が発生する可能性があるとミューラー博士は言います。「氷島が崩れて南下し、それによりバラバラに崩壊することもありえます」とし、氷島がボーフォート海氷循環によりアラスカ沿岸を流れ下り、航路や油田採掘地区へ到達する可能性を指摘しています。「崩壊し分裂した氷島は、カナダ氷層局により追跡され、船舶への警報が発令されます。最悪のシナリオは、氷島が油田採掘装置に激突し大きな被害を与えることです」と述べています。

エールス棚氷の崩壊の原因が地球温暖化であるという十分な証拠はありませんが、今回の出来事は北極圏の気候変動のその他の予兆と一致しています。「併せて考えると、これらの兆候はすべて憂慮すべきことです」と博士は述べています。

<エールス棚氷の状況>
生物学の博士課程研究の一環としてエルズミア島の棚氷エコシステムを研究したミューラー博士は、エールス棚氷崩壊の調査協力チームに招かれ、研究員たちが崩落について記載する報告書に寄稿しました。作業は、大学内のESRIサイトライセンスを使用して行われました。ミューラー博士はArcInfoでマップを作成し、研究員が一連の崩落の状況と、どの位の氷がエルズミア島の北のフィヨルドから失われたかを把握できるようにしました。

エルズミア島から崩れ去ったエールス棚氷のMODIS(中分解能撮像分光放射計)画像 (2005年8月13日20時45分 協定世界時(UTC)、写真提供:NASA)

「崩壊の事実は明白なのですが、私たちが明らかにしたかったことは棚氷崩壊時の氷島の大きさです」と博士は述べ、マッピングと分析の結果、氷島は約105平方キロメートルから84平方キロメートルに縮小したと付け加えました。エールス棚氷以外にも、ピーターセン棚氷の近くの20%の棚氷が2005年8月13日以降に失われました。また、1940年代から存在していた多年の定着氷(MLSI)は、イェルバートン湾からエールスフィヨルドの西の地点まで後退しました。

棚氷の解氷前後のRADERSAT画像(カナダ宇宙局と民間パートナーによるアラスカ衛星施設提供)をジオレファレンス、投影した後、ミューラー博士はジオグラフィックTIFFフォーマットをArcInfoにインポートしました。カナダ政府が策定した海岸沿いの等高線ベクタレイヤーで、彼は別々の時間に撮影された棚氷のRADARSAT画像の上からポリゴンを追跡しました。

「GISを使うと、いくつかの画像を切り替えることで崩壊前に氷が存在した場所を表示したり、氷のポリゴン面積を平方キロメートルで計算したりすることができます。またこのように画像を見ることで、どこの氷が消滅したのかがわかります。そこから、実質的に失われた氷を計算します」と博士は述べています。博士によると失われた氷は、138平方キロメートル(港区7つ分)にも及びます。

「GISは衛星画像の解析にも役立ちます。利点は、ポリゴンを残したまま画像を他の時間に動かすことができるということです。タイムマシーンのように、時間を前後へ動かしながら変化を観察できます。そしてArcInfoにポリゴンやベクタをオーバレイさせると境界線を探すことができ、もしそれが時間とともに変わっていたら、変化があったとわかります」と述べています。

エールス棚氷の崩壊の研究により、研究者たちは長期にわたる気候変動が崩落に起因している可能性を発見しました。

例年より高温の夏であったことに加え、ミューラー博士によるとエルズミア島は強風の影響を受けていました。「多くの多年の定着氷はエースル棚表の先端である沿岸から崩れ去り、また多くの海氷も押しのけられています。これは沖合と沿岸に強い風が吹きつけているためです。この風が定着氷を押しのけ、棚氷が自由に動ける状態になっています」。

この新しい氷島は2006年夏の間は動かずにいましたが、永久的に留まっているわけではありません。「あと1年このままかもしれないし、数カ月しかもたないかもしれません。安定している氷島でないことだけは確かなのです」とミューラー博士は指摘しています。

冬の間でさえ、巨大な氷の塊が動き始めていました。「氷島は周辺一帯を激しく流れる多くの海流にさらされているのです」

<氷の種類をマッピング>
ミューラー博士は数年前にもArcInfoを使用していました。このときは棚氷の微生物マットの研究をしながら、氷の種類をマッピングしていました。極限の環境に存在する微生物マットは、地球最古のエコシステムとして知られています。

マーカム棚氷での微生物マットの採取。マギル大学のエリック・ボットス氏、アラスカ大学地球物理研究所のデレック・ミューラー博士、アレクサンドラ・ポンチフラクト氏。(2005年8月、写真提供:デニス・サラザン氏)

「氷に依存するエコシステムに生息する耐寒生物をみることは興味深かったです。微生物マットは藻、無脊椎微生物やバクテリアで構成されており、一般的に北極圏の棚氷の表面で見つかります。棚氷は微生物マットにとってユニークな生息地です。地球が誕生して間もないころに生息していた生物の種類や、生物がどのように進化したかについての手がかりを提供してくれるでしょう」と博士は述べています。

氷の種類や海中にある氷(Marine ”basement” ice)、一時的または半透明の氷で覆われたフィルンといった氷の種類をArcInfoにマップにするとともに、微生物マットのサンプルを採った場所についても記録しました。ミューラー博士はそのマップを参照しながら、今後の北極圏の棚氷の変化について研究を続けていきます。

「温暖化による変化を予兆させる基礎情報を寒冷地域である氷圏で探しています。棚氷は気候変動の重要な指標となる可能性があります。棚氷が崩壊すれば、それは生息環境が失われるということになります」。北極圏での温暖化予測を基準にすると、博士が生きている間に棚氷は完全に崩壊する可能性があると憂慮しています。

「生物の多様性や生息地の保護が重要です」とミューラー氏は結論付けています。これらの棚氷には、バイオテクノロジー分野で役立つような低温に適応した生物が存在しているかもしれません。または、風景から消えゆく生息環境をただ重視しているだけかもしれません。

 

関連リンク

ArcNews Online: GIS Tracks 33-Square-Mile Ice Island in the Arctic

 
サイトマップ ポリシー プライバシーポリシー 米国ESRIサイト 米国ERDASサイト
Copyright (c) ESRI JAPAN. All rights reserved.