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GIS 基礎解説

交通ネットワーク解析

 

交通ネットワーク解析とは

日常生活において、出発地から目的地への最適なルートを知りたいときに、カーナビゲーション システムやルート案内のアプリケーションを使用することも多いでしょう。

network-analysis目的地へのルート検索

日常的に使用しているこのシステムの裏では、最短経路問題というグラフ理論の問題を解くアルゴリズムにより、計算が行われています。グラフ理論とは、ノードの集合とエッジ(リンクと呼ぶこともある)の集合で構成されるグラフの性質を分析する数学の一分野です。たとえば、鉄道の路線図をグラフで表現すると、ノードが駅でエッジが路線ということになります。グラフ理論を基礎におき、物事をグラフとして抽象化し、そのグラフ構造を分析する手法をネットワーク分析と呼び、社会ネットワーク分析や Web ページの検索システムなど、多くの分野・場面で用いられています。交通ネットワーク解析もその 1 つであり、交差点をノード、道路をエッジとして表現したグラフ構造を分析します。そのため、ArcGIS Network Analyst エクステンションの交通ネットワーク解析においても、ノード、エッジ、リンクといったグラフ理論の用語が用いられています。

network-analysis

交通ネットワーク解析の種類

それでは実際に、交通ネットワーク解析にはどのようなものがあるのでしょうか。目的地への適切なルートを算出するルート検索はすでにおなじみですが、そのほかにもビジネスや防災計画、保健医療計画などの場面で応用可能な解析がいくつかあります。ここではその一例として、ArcGIS Network Analyst に実装されている交通ネットワーク解析について紹介します。

到達圏解析

network-analysis自動車による施設からの到達圏解析結果

到達圏解析は、ある地点から交通ネットワークを用いた際に、指定した時間内あるいは距離内で到達することができる圏域を算出します。この解析を用いることで、施設へのアクセスのしやすさの評価をより正確に行うことができ、店舗から車で 10 分以内に居住する顧客数の算出や、避難所から 500m 以上離れた場所に居住する住民の人口の集計などに応用することができます。

配車ルート(VRP: Vehicle Routing Problem)解析

network-analysis訪問先への配車ルート解析結果

配車ルート解析は、スタート地点からグラフを構成するすべてのノードを経由して再びスタート地点に戻るときの移動コストを最小にする経路を求める巡回セールスマン問題と呼ばれるグラフ理論の問題を、実際の交通ネットワークに応用した解析です。この解析では、拠点から複数の訪問先を巡る際の最適な訪問順とルートを算出します。この解析を用いることで、訪問介護サービスの最適な巡回路の算出や、複数の配送先への適切な車両の割り当てなどに応用することができます。

ロケーション-アロケーション解析

network-analysisロケーション-アロケーション解析による学校立地の適地選定結果

ロケーション-アロケーション解析は、施設の候補地点と需要地点との関係(移動コスト、施設の魅力度、施設の供給能力など)から最適な施設配置を分析します。この解析では、施設がカバーする需要地点を最大にする方法や、施設と需要地点の移動コストを最小にする方法など、いくつかの解析方法が実装されています。この解析を用いることで、施設から 5 分以内にもっとも多くの住宅をカバーできる消防署の立地計画や、生徒の通学距離が最小となる学校の立地計画などに応用することができます。

これらの解析のほかにも ArcGIS Network Analyst には、一般的なルート解析や、ある地点から最も近い施設を検出する最寄り施設の検出、複数の起点(Origin)と終点(Destination)の間の移動コストを算出する OD コスト マトリックスが実装されています。