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GIS 基礎解説

写真測量

 

写真測量とは

「測量」とは、地表の地点の位置関係を何らかの方法で測定し、地物の位置や面積、体積などを決定するための作業のことを言います。その「何らかの方法」として、写真を用いるのが写真測量です。つまり、写真として撮影された対象物の位置・大きさ・形状などを判定・測量する技術です。

写真測量には大きく分けて、地上用のカメラで水平に対象物を撮影する「地上写真測量」と、航空機などを用いて空中から地表を撮影する「空中写真測量」の 2 種類があります(ここでは空中写真測量について説明します)。また、空中写真の撮影に用いられる機材はセスナ機などの航空機であることが多いのですが、人工衛星、ヘリコプター、ラジコン機なども使用され、最近ではドローン(UAV: 無人航空機)での撮影もポピュラーになりました。

空中写真測量のしくみ

なぜ、空中から地表の写真を撮影することで測量ができるのでしょうか?その基本的な原理は「三角測量」です。下図は三角測量の原理を図にしたものです。

この図において、位置を計測するターゲットをヨットだとすると、正確な位置がわかっている 2 点 A と B があり、各点とヨットとの角度 α と β を精密に計測することにより、辺 AB 以外の 2 辺の長さも求められますので、結果としてヨットの正確な位置を算出することができます。

空中写真測量の場合は、上図における点 A と B は空中に存在します。

つまり、移動する航空機に搭載されたカメラから地表を撮影することで、三角測量の原理を応用して地表面の三次元の位置を計測することができます。この場合、撮影時のカメラの正確な位置と角度が必要ですので、航空機には GPS/IMU という装置を搭載し、GPS で位置を、IMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)で角度を計測します。また、2 個所の撮影位置から同一地点の位置を計測するため、2 枚の写真はオーバーラップしている必要があります。

この空中写真測量の成果物として、デジタルオルソ画像や数値地形図、3D モデルなど、GIS で活用できるさまざまなデータを作成することができます。

ArcGIS での写真測量

ここまでご説明したのは空中写真測量のほんの「さわり」にすぎません。実際に空中写真測量を実施するためには、高度な技術的知識と、航空機や GPS/IMU といった専門の機器、そして地表における既知の地点を航空機からの写真に収めるための対空標識の設置や標識の精密測量など、さまざまな技術と手順を必要とします。

そのような、本来はとても大がかりな空中写真測量を、ドローン等の個人でも比較的手軽に利用できる機材で実行できるようにするために、ArcGIS プラットフォームには ArcGIS Drone2MapSite Scan for ArcGIS という「ワンボタン写真測量ソフトウェア」があり、GPS データ付の静止画像を用いて写真測量処理を実行し、GIS ですぐに使える 2D または 3D のデータを作成することができます。

ArcGIS Drone2Map や Site Scan for ArcGIS で作成したデータは、ArcGIS Online へ直接アップロードして共有したり、ArcGIS Desktop でさらに高度な解析や可視化を行ったりすることができます。


ドローンで取得された画像から生成された 3D データ (※)

このように、民生用のドローンで撮影した位置情報付きの写真があれば、専門知識のない方でも簡単な操作で空中写真測量を行い、業務に必要となる 2D や 3D のデータを手に入れることができる時代になりました。この記事をお読みの皆さんも、「手軽にできる写真測量」の世界へ足を踏み入れてみませんか?

※(有)大光電気様が大分県「原尻の滝」をドローンで空撮した画像をご提供いただき、3D データ生成に使用しました。